関西電力(読み)かんさいでんりょく

共同通信ニュース用語解説 「関西電力」の解説

関西電力

1951年設立の電力大手。福井県美浜町、高浜町おおい町に3原発11基を保有している。うち4基は再稼働し、3基は再稼働を目指して安全対策工事を実施しており、4基は廃炉を決めた。電気事業連合会関西経済連合会、関西財界でも重要な役割を担う。2019年3月期の連結売上高は3兆3076億円。

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百科事典マイペディア 「関西電力」の意味・わかりやすい解説

関西電力[株]【かんさいでんりょく】

1951年電力再編成により関西配電,日本発送電(一部)の事業を継承して設立。9電力会社の一つ。供給区域は三重の大部分を除く近畿一円と岐阜,福井の各一部。1963年完成の黒部第4など水力発電所が多く,石油依存度が低い。東京電力と並ぶ業界の大手だが,原子力発電で先行し,福井県若狹地方に美浜原発(1〜3号機で1970年〜1976年に運転開始,いずれも加圧水型軽水炉),高浜原発(1〜4号機で1974年〜1985年に運転開始,いずれも加圧水型軽水炉,3号機はプルサーマル),大飯原発(おおいげんぱつ)(1〜4号機で1979年〜1993年の運転開始,いずれも加圧型軽水炉)がある。実際の発電は原子力が55%をしめる。2011年3月の東京電力福島第一原発事故を受け,定期点検中はもちろん点検後の原発を含めてすべての原発の再稼働がなされていなかったが,2012年4月野田政権は,大飯原発3号機・4号機の安全性確認のストレステストの結果を踏まえて再稼働の承認を西川福井県知事とおおい町議会に要請,再稼働容認を受けて,2012年7月,大飯原発3号機・4号機が稼働を再開した。ただし,原子力規制委員会は大飯原発に関して2013年7月に施行される新規制基準に適合しているかどうかを確認する必要があるとして,9月以降に一旦再停止して適否を判断する,とした。原子力規制委員会が2013年4月に発表した新規制基準案では,過酷事故,地震,津波対策などの大幅な強化を電力会社に要求している。原子力発電依存度の高い関西電力は原発早期再稼働をめざし稼働を申請した。大飯原発3号機・4号機は全国で唯一運転していたが,定期検査で停止,関西電力は定期検査後の早期再稼働を目指し,7月の新基準施行当日に原子力規制委員会に審査を申請した。原子力規制委員会は大飯原発の重要施設を横切る断層が〈活断層ではない〉との見解で一致したことを受け審査を再開したが,関西電力は原子力規制委員会の指摘を受け2014年4月,想定する地震の揺れを従来よりも大きくなるよう見直す考えを明らかにした。また高浜原発について,原子力規制委員会は高浜原発の津波の高さ想定を指摘,関西電力側は想定を見直して新たな防潮設備を追加する計画を発表した。追加設備は取水口側の防潮ゲート(道路側の高さ6.5m)と放水口側の防潮堤(高さ6m)。さらに関西電力は2015年3月としていた追加設備完成時期を2014年3月に前倒しする意向を示した。また2014年2月原子力規制委員会は,2013年6月に輸入された3号機のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料20体について,輸入燃料体検査の合格証を関西電力に交付した。高浜の再稼働時にMOX燃料を使えるようになった。関西電力は赤字解消のためにも防潮追加設備の完成時期を1年前倒し,2014年夏までに再稼働させたい考えだが,2014年3月原子力規制委員会は九州電力川内原発の審査を優先する考えを提示。関西電力は2014年4月高浜について想定される地震の揺れの見直しを表明した。美浜原発についても再稼働申請をしたが規制基準を満たすのが難しく,廃炉の判断を迫られる可能性があるものもある。いずれも火災防護指針が定められた1980年以前に造られ,規制基準が求める難燃ケーブルが使われていない。関西電力はケーブルに延焼防止剤を塗ることで同等の性能を満たしていると主張するが,原子力規制委員会の基準を満たせない可能性が高い。また規制法は原発の運転期間を原則40年に限っている。40年を超えて運転するには設備の劣化を細かく点検し,大規模な修繕工事が必要になるとみられる。関西電力は2年連続で2000億円以上の最終赤字を計上し,2013年度も980億円の赤字となる。黒字化には大飯,高浜の2原発の4基の再稼働が必要であるとして,優先的に審査される九州電力川内原発に続き審査に入ることに望みをつなげている。しかし大飯・高浜両原発は,さらに補強工事が必要になるとみられ,3号機・4号機の年度内の再稼働は困難になる。これまでの審査では,想定する最大級の地震の揺れである〈基準地震動〉が決まるかどうかが最大の焦点となってきた。関西電力は想定する震源について,深さを4kmと想定していたが,原子力規制委員会の指摘を受けて深さ3kmに見直すこととし,原発の規制基準への適合審査会合で明らかにし,原子力規制委員会が認めた。地上での揺れの強さは,震源が浅いほど大きくなる。また,美浜原発は活断層について国が調査する予定である。2015年3月関西電力は,美浜原発1号機・2号機はすでに運転開始から40年を超え,運転の延長が認められても採算が合わないと判断。同月,美浜原発1号機・2号機の廃炉を決めた。大飯原発については,原子力規制委員会は敷地内断層の調査が途中だとして審査を後回しにしていたが,外部専門家らが断層が〈活断層ではない〉との見解で一致したことを受け,審査を進めている。しかし2014年5月,福井県民らが関西電力を相手取り,大飯原発3号機・4号機の運転差し止めを求めた訴訟で福井地裁(樋口英明裁判長)は運転差し止めを命じる判決を言い渡した。関西電力側が控訴。控訴審は,名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)で進められている。2015年2月原子力規制委員会は,高浜原発3号機・4号機が〈新規制基準を満たしている〉と正式に認めた。しかし高浜原発についても地元住民らは2014年12月,関西電力を相手取り高浜原発3号機・4号機の再稼働差し止めの仮処分を福井地裁に申請。2015年4月福井地裁は高浜原発3号機・4号機の仮処分を決定した。原子力発電依存度の高い関西電力は,2011年夏,同年12月〜2012年3月までの冬季の節電を全需要家に要請したが,2012年夏は見送っている。本店大阪。2011年資本金4893億円,2011年3月期売上高2兆7697億円。売上構成(%)は,電気事業94,情報通信事業1,その他5。→電気事業
→関連項目大河内[発電所]奥多々良木[発電所]奥吉野[発電所]きんでん[株]敦賀原発

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関西電力」の意味・わかりやすい解説

関西電力(株)
かんさいでんりょく

業界第2位の民間電力会社。供給区域は近畿一円およびその周辺地域で、1951年(昭和26)電気事業再編成の一環として旧関西配電の供給区域を継承して設立された。当初は大ダム方式の水力発電所の建設に力を注ぎ、社運を賭(と)して黒部(くろべ)川第四発電所(富山県、1961年運転開始)を完成させた。1960年代には重油専焼の大容量火力発電所を次々と建設。また、「万国博に原子の灯を」を合いことばに、いち早く原子力発電にも取り組んだ。その結果、1970年には民間9電力会社のトップを切って美浜(みはま)原子力発電所(福井県)の営業運転開始に踏み切った。他社よりも原子力発電の比率が高い。LNG(液化天然ガス)火力や石炭火力にも力を注ぐ。資本金4893億円(2008)、売上高2兆4785億円(2008)、販売電力量は1504億キロワット時(2007年度)。大飯(おおい)原子力、姫路第2火力など、多数の発電所をもつ。

[橘川武郎]

『関西地方電気事業百年史編纂委員会編『関西地方電気事業百年史』(1987・関西電力株式会社)』『関西電力株式会社編・刊『関西電力五十年史』(2002)』『橘川武郎著『日本電力業発展のダイナミズム』(2004・名古屋大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関西電力」の意味・わかりやすい解説

関西電力
かんさいでんりょく

電力会社。 1951年電気事業再編成令により関西配電と日本発送電の共同出資で設立。電力供給区域は近畿一円 (兵庫県の一部を除く) ,福井,三重,岐阜各県の一部。年間販売電力量 1429億 kWh。発電設備は認可最大出力 3746万 kW。 70年同社初の原子力発電所,美浜原子力発電所の1号機が運転開始。年間営業収入2兆 6515億 9700万円 (連結) ,資本金 4893億 2000万円,従業員数3万 7911名 (2002) 。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「関西電力」の解説

関西電力

正式社名「関西電力株式会社」。英文社名「The Kansai Electric Power Company, Incorporated」。電気・ガス業。昭和26年(1951)設立。本社は大阪市北区中之島。電力会社。供給区域は大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山の2府4県と三重・岐阜・福井県の一部。原子力発電の先駆。東京証券取引所第1部・名古屋証券取引所第1部上場。証券コード9503。

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