日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クラーク(ロシアの富裕な農民)
くらーく
кулак/Kulak ロシア語
ロシアの富裕な農民、農村ブルジョアジー。1861年の農奴解放後に成立し、20世紀初めには農家の5分の1を占めた。ロシア政府は、1905年革命後、ストルイピン改革によってクラークを育成強化し、農村における政権の支柱としようとした。17年の十月革命後、国内戦期には反革命の社会的基礎となったが、食糧徴発制によって打撃を受けた。21年以後のネップ(新経済政策)期において、土地国有という条件やソビエト政府の政策によってその力は制限されていたが、27年には農家の4~5%、すなわち100万戸以上になっていた。ジノビエフ、トロツキーらは、この力を過大に評価してネップの速やかな変更を求め、一国社会主義論争の論点の一つとした。スターリンは反対派を敗北させたのち、穀物危機に直面して政策を転換、29年末からクラークの激しい抵抗を排して農業経営の集団化を強行、クラークを階級として清算し、農業、家畜などの生産手段をコルホーズの財産とした。
[木村英亮]