サシコエ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サシコエ」の意味・わかりやすい解説

サシコエ

日本音楽の声楽における旋律形態の名称。いわゆる曲節または旋律型として,楽曲構成部分名称ともなっている。「指声」「刺声」などとも書かれ,「さしごえ」ともいい,略して「サシ」ともいう。一般に,韻律のある歌詞であっても,全体的に旋律性に乏しく朗誦に近い形態についていい,種目によって多少内容が異なる。 (1) 声明では,講式において,初重と二重との中間にあたる中音の部分で旋律の動きのほとんどない場合にいう。 (2) 平曲では,クドキよりは韻律的でもあり旋律性もあるものの,音楽的にはクドキと同様な朗誦形式に近い部分の曲節名称。主要音の高さがクドキとは違う。 (3) 謡曲では,いわゆる「サシ謡い」の部分の謡い方をいう。その部分を単にサシともいい,上哥 (あげうた) ,下哥またはクセ,ロンギなどに先行する。リズムのうえでも「サシノリ」ともいうべき拍子に合わない特殊な非拍節リズムとなり,音階のうえでも「サシ音階」ともいうべき特別な音階によっている。ヨワ吟のサシの上音は,普通の上音より長2度低く,サシ上からサシ上ノウキを経て中音になる場合,4度下降となる。

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世界大百科事典(旧版)内のサシコエの言及

【サシ】より

…この楽曲の〈上音〉は他の上音より音高が低く,〈サシ上音〉と呼ばれる。サシは流派により〈サシコエ〉(指声)ともいうが,この用語は声明(しようみよう)や平曲で,リズムの変化がなくさらさらと歌われる楽曲を意味する。【松本 雍】。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」