声楽(読み)セイガク(英語表記)vocal music

デジタル大辞泉 「声楽」の意味・読み・例文・類語

せい‐がく【声楽】

人間の声による音楽。独唱重唱オペラカンタータなどを含む。⇔器楽
[類語]音楽ミュージック器楽洋楽邦楽雅楽音曲

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精選版 日本国語大辞典 「声楽」の意味・読み・例文・類語

せい‐がく【声楽】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人間の声によって成立する音楽上の一分野。ソプラノアルトテノールバリトン、バスなどによる独唱・重唱をはじめ、合唱、オラトリオミサ曲などをふくむ。⇔器楽
    1. [初出の実例]「我等専門家ならねども声楽としての謡曲(うたひ)の価値何程のものであるかは知れた議論なり」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵天下太平なる哉)
  3. 音楽をいう。
    1. [初出の実例]「声は声楽ぢゃほどに声(こえ)と読ふたがよいぞ」(出典:史記抄(1477)四・秦本紀)
    2. [その他の文献]〔晉書‐楽志〕

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改訂新版 世界大百科事典 「声楽」の意味・わかりやすい解説

声楽 (せいがく)
vocal music

器楽に対する用語で,人声による音楽。声のみによるものと,器楽を伴うものとあり,母音唱法などの場合を除き,一般に言葉と結合している。演奏をする人数の点で区別すると,独唱,少人数で各声部を1人で歌う重唱(二重唱,三重唱など),多人数による合唱の別があり,また一つの作品のなかにそれらが結合した形態(ミサ曲,オペラなど)がある。

 それぞれの人には固有の声の出る高低の範囲があり,女声はソプラノ(高音域),メゾソプラノ(中音域),アルト(低音域),男声はテノール(高音域),バリトン(中音域),バス(低音域)の区別があり,さらに音色の持味によって,ソプラノ・ドラマティコ(劇的表現に適している),ソプラノ・レッジェーロ(軽い性格のもの)などの区別がある。

 歌詞の性格や音楽の用途から種々の曲種が区別される。宗教的な声楽にはミサ曲,教会カンタータ受難曲オラトリオモテットなど,世俗的な声楽には,フロットラ,ビラネッラ,シャンソンマドリガルリートなどがある。これらは別の視点から,劇的なジャンルとしてオペラやオラトリオ,叙事的なバラード,抒情的な歌としてリートなどに区別される。ミサ曲は単に音楽と言葉が結合しているだけでなく,宗教的行動のなかで展開される。言葉と音楽の結合に関しては,歌詞の各節を同じ旋律で歌う有節歌曲と,同じ旋律を繰り返さないで通して作曲される通作歌曲とがある。

 西洋音楽ではほぼ16世紀までは声楽が中心であったが,それ以後しだいに器楽が隆盛となり,古典派の時代には器楽が優位になった。しかし声楽・器楽は截然と対立しているのではなく,古い時代には声楽曲として作られた作品が楽器により演奏されることもあり,また声楽・器楽間の様式上の特徴の影響または交流がしばしばみられる。声楽曲の内部でも,声楽的な歌詞演唱の要求と,器楽的・構成的な要求とのさまざまなかたちや比重での対決と調停が,音楽史上の種々の声楽曲に見いだされる。声楽・器楽という音を発する材料のうえでの区別は,現代の電子音楽ミュジック・コンクレートにおいては,伝統的な楽器の排除と演奏という契機の脱落によって意味を失っている。

 日本の伝統音楽は声楽曲が大部分で,長唄や大部分の地歌箏曲などの〈歌い物〉と,平曲浄瑠璃などの〈語り物〉の区別がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「声楽」の意味・わかりやすい解説

声楽
せいがく
vocal music

人声のために、人声による表現を主たる目的として作曲、演奏される音楽。器楽の対語。人声が用いられていても、作曲者の主たる関心が器楽に向けられている場合、たとえばベートーベン交響曲第九番やマーラーのいくつかの交響曲の場合は、声楽の枠内には入れられない。声楽の西洋音楽および日本音楽の一般的な分類方法はのとおりである。ただし、この分類は便宜的なものにすぎず、個々の場合でその様相は多様に変化する(たとえば、モテットやカンカータには世俗的な内容をもつものもある、など)。

[石多正男]

声楽の作曲

声楽は当然のことながら歌詞を伴う。作曲に際しては、通常その歌詞の内容を表現することが作曲家の最重要課題である。したがって、声楽における形式、旋律、和声などはその歌詞に左右される。たとえば、詩がドイツのバラーデのように中世の歴史上あるいは空想上の事件やロマン的な物語を扱っている場合には、通作形式(繰り返しがなく全曲通して作曲される)で作曲され、素朴な民謡調の歌曲などは有節形式(同じ旋律が詩の各節で繰り返される)で作曲されることが多い。また、作曲家は声楽の旋律を創案する場合、かならずその歌詞がもつことばアクセントや意味を考慮し、それに適するリズムや音の動きを当てはめねばならない。たとえば、ことばの一音節に一音符を与えるか(シラビックな様式)、一音節に多音符を与えるか(メリスマ的な様式。母音唱法で歌われる)は、そのことばが曲中で果たす役割に左右される。また、激しい感情を表現する場合など、しばしばその箇所に増減音程が用いられる。

[石多正男]

声楽の演奏

声楽家は作品を作曲家の意図に従って表現すると同時に、その表現の仕方に自身の解釈を加えようとする。しかしそのためには、技術的な訓練として発声法を学ばなければならない。発声とは呼気が声帯を振動させて声を発生させることをいうが、このときの声楽家の姿勢、呼吸(一般に横隔膜の上下によって呼吸をコントロールする腹式呼吸が使われる)、舌、唇、歯、鼻腔(びくう)、口腔、胸腔など、身体全体の状態によって生み出される声は、美しくも耳障りにもなる。声楽家はこれらの諸器官を駆使して、自身の表現にもっとも適した声の音色、音質、声量、声区(胸腔を中心に響かせる胸声、顔頭部の諸共鳴腔を中心に響かせる頭声、裏声とよばれているファルセットなど)を選ぶ。西洋の声楽教本には、コンコーネ、パノフカ、サルバトーレ・マルケージ、マチルデ・マルケージなどによるものがあり、声楽のさまざまな技法を学ぶため、広く使われている。

 なお声楽家は、女性はソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト(コントラルト)、男性はテノール、バリトン、バスの、以上六つに分類される。

[石多正男]


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普及版 字通 「声楽」の読み・字形・画数・意味

【声楽】せいがく

音楽。〔列子、仲尼〕大夫は齊・魯の(巧)多きを聞かざるか。善く土木を治むるり。~善く聲樂を治むるり。~群才備はる。

字通「声」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「声楽」の意味・わかりやすい解説

声楽
せいがく
vocal music

人声による音楽の総称。西洋音楽では普通ソプラノ,メッツォ・ソプラノ,アルト,テノール,バリトン,バスの6種に区分され,必要に応じて細分化される。形態のうえから独唱,斉唱,重唱,合唱,および無伴奏,伴奏付きに分けられる。通常,歌詞を伴っていることから,言葉,文芸との結びつきが強い。形式面から,「単独形式」と「複合形式」に大別され,前者は歌曲 (リート) によって代表される。後者は複数の楽曲から成り,カンタータ,ミサ曲,受難曲,オラトリオ,オペラおよび連作歌曲などがあげられる。技術的には,発声法,唱法,発音法などに区分される。人声による直接的で豊かな感情表現は声楽の大きな特質といえる。

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