拍子(読み)ヒョウシ

デジタル大辞泉 「拍子」の意味・読み・例文・類語

ひょう‐し〔ヒヤウ‐〕【拍子】

音楽用語。
㋐音楽のリズムを形成する基本単位。一定数のはくの集まりで、強拍弱拍との組み合わせからなる。拍の数により二拍子三拍子などという。雅楽でははや拍子のべ拍子など。
㋑雅楽の笏拍子しゃくびょうしのこと。また、その奏者。
㋒雅楽で、ある楽曲中での太鼓の打拍数。また、それによって表す曲の規模。拍子八・拍子十など。
㋓能楽で、四つの伴奏楽器、すなわち笛・太鼓・大鼓・小鼓のこと。また、謡曲をうたう音声の節度。
㋔能楽・舞踊で、足拍子のこと。
何かが行われたちょうどそのとき。とたん。「立ち上がった拍子に頭をぶつける」
物事の進む勢い。調子。「拍子に乗る」「とんとん拍子
連句の付合つけあい手法の一。前句の句勢に応じてつける方法。→七名八体しちみょうはったい
[類語](1ビート音頭調子音調音律調性音階音程・音高・トーンはく律動乗りリズムテンポ調べ/(2はずみとたん

ほう‐し〔ハウ‐〕【拍子】

《「はくし」の音変化》
ひょうし。また、ひょうしをとること。
「―たがはず、上手めきたり」〈・紅葉賀〉
笏拍子しゃくびょうし」の略。
「あるかぎりの人、―あはせて遊び給ふ」〈宇津保・俊蔭〉

びゃく‐し【拍子/百師/百子】

《「ひゃくし」とも》「笏拍子しゃくびょうし」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「拍子」の意味・読み・例文・類語

ひょう‐し ヒャウ‥【拍子】

〘名〙
[一] 音楽で用いる語。
① 旋律の進行に際し、一定の拍(はく)をひとかたまりにして区切ったもの。リズムの基礎をなす。拍の数と強弱の関係により、二拍子、三拍子、四拍子などという。日本音楽では、雅楽に延(のべ)拍子、早拍子、只(ただ)拍子、夜多良(八多良)拍子などの種類がある。間(ま)拍子はリズムの意味。ほうし。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「いよいよあはれがらせ給て、御扇してひゃうし打たせ給ふ」
② 楽曲の進行の時間を測る単位。雅楽では、楽句を数える単位となる太鼓の強打音をいう。
③ 神楽(かぐら)、催馬楽(さいばら)、東遊(あずまあそび)など雅楽で用いる楽器の一つ。笏(しゃく)を縦に二分したような形の板を打ち合わせるもの。歌の主唱者がこれを持って拍節をとる。笏拍子(しゃくびょうし)。また、笏拍子を持つ奏者。ほうし。
※源氏(1001‐14頃)篝火「弁の少将ひゃうし打ちいでて、しのびやかにうたふ声」
④ 能楽などで、楽器のこと。笛・小鼓・大鼓・太鼓を四拍子という。
※わらんべ草(1660)四「よく拍子にあふは、みなしたるき位にて、殊の外きらふ也」
⑤ 能楽・舞踊で、足拍子のこと。
※申楽談儀(1430)よろづの物まねは心根「佐野の船橋に『宵々に』、ちゃうど踏む、同じ、いと大事のひゃうし也」
[二] 音響表現や物事の調子・勢い。
① 警戒や合図のために、太鼓や拍子木などを打つこと。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)三「夕風に火用心を触、太鼓は我物にして、自然と三つ拍子(ビョウシ)を覚へ」
② 俳諧で、支考の付合七品目の一つ。前句の語呂の勢いに乗って付けるもの。〔俳諧・俳諧十論(1719)〕
③ 物事の進む勢い。進みぐあい。調子。
史記抄(1477)一八「字が不足してひゃうしがわるさに首頭足とをいたぞ」
④ 物事をするはりあい。
※松翁道話(1814‐46)三「正直過ぎる人のものは、取っても拍子がない」
⑤ 何かが行なわれたちょうどその時。はずみ。とたん。
※史記抄(1477)六「活と前へはねて喉ふえをはねきるひゃうしに左手を以て」
[三] 小荷駄用の引馬の面掛(おもがい)の一種。馬の顔の左右につける細長い板で、鼻づらから縄をかけてとめる。拍子覊(ひょうしおもづら)、拍子鼻革ともいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
[補注]もとは平安時代以前に日本にはいってきた楽器名を表わす漢語で、「拍」ともいい、「拍板(はくはん)」(板を何枚か重ね、なめし皮の紐でつないだ楽器)の類であろうと考えられる。

ほう‐し ハウ‥【拍子】

〘名〙
① ひょうし。また、ひょうしをとること。→ひょうし(拍子)(一)①。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「あるかぎりの人、はうし合はせて遊び給ふ」
② 神楽(かぐら)・催馬楽(さいばら)・東遊(あずまあそび)など雅楽で用いる楽器。笏(しゃく)を縦に二つに割った形の板で、主唱者が両手に持ち、打ち合わせて音を発し拍節をとる。また、それを用いる主唱者。笏拍子(しゃくびょうし)。ひょうし。
※枕(10C終)一四二「笛吹き立てはうしうちて遊ぶを」

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改訂新版 世界大百科事典 「拍子」の意味・わかりやすい解説

拍子 (ひょうし)

リズムに関連して広く用いられる音楽用語。

以下に述べるように,複合語も含めてさまざまの使われ方をするが,〈打つ〉という行為によって具現され,あるいは感得されるリズムと強く結びついている点で共通している。まず打楽器類に笏(しやく)拍子銅拍子,大拍子(だいびようし),拍子木,拍子盤などがあり,笏拍子は単に拍子とのみ称されることが多い。また能楽で使用される4種の楽器,笛(能管),大鼓(おおつづみ),小鼓,太鼓(締太鼓)を四拍子(しびようし)という。ここに管楽器の笛が含まれているのは,その音楽構造に占めるリズム面の重要性の反映ともいえ,決して不自然な用語ではない。次に,特定の演奏者を拍子と呼ぶ分野がある。雅楽では東遊(あずまあそび),久米歌,催馬楽(さいばら)などにおける声楽パートの主席唱者を拍子といい,御神楽(みかぐら)では本方(もとかた)と末方(すえかた)に1人ずついる主唱者を,本(もと)拍子,末拍子という。それは,これらの主唱者が,笏拍子を打ちながら声部全体をリードすることによっている。中世の今様,雑芸(ぞうげい)の女性芸能者を白拍子(しらびようし)というのも,鼓を伴奏に用い,その打音に合わせて拍子(足拍子)を踏む,同じく白拍子という名の芸能種目を演じたからであろう。なお,拍子の語は,このように打音をいう場合もあり,舞踊用語でもある。次に,理論用語としての拍子について述べる。

雅楽の唐楽とうがく)や高麗楽(こまがく)では,非拍節的リズムを〈拍子がない〉,拍節的リズムを〈拍子がある〉といい,序拍子楽拍子ということもある。この場合の拍子は,拍節にほぼ等しい。それから,拍節的リズムの楽曲の規模を表示するために,〈拍子16〉など,拍子いくつといういい方がされる。これは,3種の打楽器(羯鼓(かつこ)または三ノ鼓と太鼓,鉦鼓(しようこ))が反復演奏するリズム型が何回奏されるかということであるが,そのリズム型は最終小節で太鼓の雄桴(おばち)(右手で革面の中央を強く打つ)が打たれるから,一曲中に打たれる太鼓の打音数と説明されることが多い。しかし,実際の演奏では,途中から加拍子(くわえびようし)/(かひようし)の打ち方に変わり,太鼓の打音も拍子いくつと表示されている数より多くなってしまう。この加拍子というのは,基本のリズム型より打音を多くする打ち方で,各基本型ごとに,それぞれの加拍子の打ち方が決まっている。基本のリズム型には,唐楽では早四拍子(はやよひようし),早八拍子(はややひようし),早只八拍子(はやただやひようし),延四拍子(のべよひようし),高麗楽では四拍子(よひようし),唐拍子(からひようし)などがある。唐楽の早,早只,延というのは拍節の種類で,四拍子,八拍子などというのは,そのリズム型を構成する小節の数である。たとえば四拍子は,4小節で1周期ということで,太鼓の雄桴はその第4小節の第1拍で打たれる。ただし,小節という語は雅楽では用いず,楽譜で小さな点で表記するところから小拍子(こびようし)といっている。神楽歌には,閑拍子(しずびようし),揚拍子(あげびようし)という対概念があり,唐楽などの序拍子,楽拍子にあたるが,神楽の場合は,同一詞章,同一旋律骨格による閑拍子・揚拍子の一対を続けて演唱する点に特色がある。

能楽の分野でも,拍あるいは拍節を拍子という。謡(うたい)は,リズム様式の点で拍子不合(ひようしあわず)と拍子合(ひようしあい)の2種があり,後者は八拍子(やつびようし)と称する8拍単位の拍節構造を有するリズム,前者は非拍節的リズムである。そして拍子合の謡はさらに平ノリ,中ノリ,大ノリの3種の別があり,実際の〈拍子当り〉は,各句の字数や節付けによって,さまざまの形がある。このリズム法を地拍子というが,実演に際しては高度なくふうが加えられる。囃子については,笛には謡の地拍子にやや似た事柄があるものの,地拍子とはいわず,また変化の仕方もはるかに少ない。しかし,囃子全般にわたって拍子の観念は,謡と同じ程度に存在しており,渡り拍子乱拍子(らんびようし)などの術語がある。能楽では足拍子も重要で,波間之拍子(なみまのひようし),雪踏之拍子(せつとうのひようし)など,特別な習いのものもある。

近世邦楽における拍子も,原理は同じで,譜本などにも書かれるが,日常の教習や合奏の現場で,この語が用いられる頻度は,雅楽や能楽の場合ほどには多くないかもしれない。その中で間拍子(まびようし)は,表間(おもてま)・裏間の繰返しで構成される2拍子の拍節,あるいはその時間的進行,すなわちリズム感の意味でよく用いられる。拍子単独でも同じように使われて,拍子に乗る(リズム感豊かに演奏する),拍子が変わる(テンポ,あるいは1拍のとり方が変わる),中ノリの拍子(普通のテンポ)などということがある。また,とくに箏曲では,楽曲の長さを小節数で表す場合,何拍子といういい方をする。すなわち,この拍子は小節のことで,雅楽の影響の少なくない箏曲らしい考え方といえよう。ただし,これは雅楽の小拍子のレベルの拍子であり,したがって,組歌の1歌が64拍子だとか,段物の1段は52拍子というように,雅楽の場合よりその数はずっと多くなる。一方,歌舞伎所作事(しよさごと)では,槌(つち)拍子や足拍子などのリズムのおもしろさを強調する場面の音楽として,《供奴》や《小鍛冶》などの拍子の合方(あいかた)があり,また,俳優がみずからうたいながら踊る形式を拍子舞といい,《蜘蛛拍子舞(くものひようしまい)》などが,拍子舞部分を含む曲の代表的なものである。
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西洋音楽では,一定の周期でアクセント(強拍)が繰り返されることを拍子という。ニュアンスは少し違うが拍節ということもある。拍子のもととなる音価の基本単位の規則的な脈動を拍という。西洋近代の5線記譜法では,視覚的便宜をはかって,拍のまとまりごとに縦線が引かれている。これを小節線bar,bar-lineといい,これによって仕切られた1区画を小節bar,measureという。一つの小節は拍子の1単位に相当し,原則として小節線のすぐ後の拍(第1拍)が強拍(下拍ともいう)にあたる。その他の拍は,すべてこれよりも弱いが,弱拍どうしの間でも微妙な強弱の違いがある。小節線のすぐ前の拍あるいは小節内の最後の拍を,とくにアウフタクトAuftakt(上拍)という。これは強拍を準備し,その到来を期待させるもので,それが第何拍に位置するかによって拍子の種類も決定される(いきなり強拍で始まることを強起,弱拍で始まることを弱起というが,強起の曲やフレーズでも潜在的にアウフタクトが存在していると考えられる)。拍子記号は曲頭に音部記号と調号に続いて分数で表示される。分母は単位音符の種類,分子は1小節内の拍数,すなわち拍子の種類を表す(分母はまれに省略されることもある)。たとえば4/4は4分音符を単位とする4拍子である(この場合,拍の強弱は強・弱・中強・弱となる)。拍子の分類法はいくつかあるが,日本では単純拍子(2,3,4拍子),複合拍子(6,9,12拍子),混合拍子(5,7拍子など)に大別する分類法が主流である。単純拍子はあらゆる拍子の基礎となるもので,とくに素数の2,3拍子は,歩行やステップなど身体の基本動作とかかわりが深く,舞曲の拍子としても重要である。複合拍子は複数の単純拍子の法則を合成したもので,1拍が3分割されるところに特徴がある。たとえば6/8は8分音符三つを1拍とする2拍子系である。混合拍子は一般に2拍子と3拍子の組合せからなり,たとえば5拍子は2+3ないし3+2の構造をとることが多い。また,もっと不規則な形が現代音楽や諸民族の音楽にみられる。このほか変拍子として,2拍子系が一時的に3拍子系へ転換されるヘミオリアや,複数の拍子が継起的あるいは同時的に使用されるポリリズムなどがある。

 以上は狭義の拍子で,これは規則的なステップが不可欠の舞曲やその影響を受けた17世紀以降のリズム法において発展したものである。一方,中世の単旋律聖歌のように,原則として自由リズムであるかもしくは詩の韻律上の長短に支配された音楽では,拍も拍子も存在しない。13世紀以後ルネサンスに至るまで発展した定量記譜法による音楽では(楽譜),音の長短が厳密に規定され,絶対的な音価の基準としてタクトゥス(拍)が設定された。さらにいくつかの拍がまとまって一定の時間単位となり,それがリズムの流れの基本的な枠組みとなった。広い意味ではこれも拍子の概念に含めることもあるが,この場合は拍はあっても周期的なアクセント感が希薄である。17世紀以後の狭義の拍子に基づき小節線で仕切られた音楽においても,レチタティーボのような自由リズム風の部分が挿入されることもあった。また拍子と密接なかかわりをもつものにフレージングと和声進行があるが,18~19世紀の音楽においてこれらは相関的に発展したといえる。20世紀では調性和声法の解体とともに,再び自由リズムの音楽も出現してきている。なお,拍子という語は本来日本の伝統音楽の用語で,明治以後,上述のような概念をもつ英語metre,meterやドイツ語Taktの訳語として洋楽にも転用されるようになった。
リズム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「拍子」の意味・わかりやすい解説

拍子
ひょうし
metre (meter) 英語
time 英語
measure 英語
Takt ドイツ語
mesure フランス語
misura イタリア語

音楽上のリズムに関する用語。元来は日本音楽の用語であったが、今日では広く欧米音楽にも用いられる。リズムと拍子とはしばしば混同して用いられるが、両者の間には本来区別されるべきものがある。つまり、リズムが「継起的な音運動現象の生み出す時間的進行上の秩序」と定義されうるのに対し、拍子は「最小の時間単位である拍が集まって組織された音楽の一定の時間単位」および「強拍と弱拍が規則的に繰り返されるアクセントの周期的な反復」を意味し、拍子はあくまでもリズムの一種にすぎない。

 現在もっとも一般的に用いられている拍子は、17世紀以後の欧米音楽におけるものである。そこでは拍子が小節線でくぎられた1小節内に含まれる単位音符の数によって定められ、それを示すには普通、拍子記号が用いられる。拍子記号は、原則として分母に単位音符の種類、分子に1小節内のその数を置いた分数の形で表される。拍子の分類法はいくつかあるが、日本では普通次の3種に大別する。〔1〕単純拍子(2、3、4拍子) すべての拍子の基礎となる。〔2〕複合拍子(6、9、12拍子など)
 複数の単純拍子が合成されたもので、各1拍が3分割される点が特徴である。たとえば6/8拍子は8分音符三つを1拍とする2拍子系ととらえられる。〔3〕混合拍子(5、7拍子など) 複数の単純拍子が混合されたもの。たとえば5拍子は2拍子と3拍子の組合せで、2+3または3+2の構造をとる。このほか変拍子として、2拍子系が一時的に3拍子系に転換されるヘミオリアや、複数の拍子が継時的または同時的に用いられるポリリズムなどがある。

 なお、日本音楽の用語としての拍子は、雅楽、能、箏曲(そうきょく)、三味線音楽、舞踊などそれぞれに応じてその内容が多少異なっている。

[黒坂俊昭]


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百科事典マイペディア 「拍子」の意味・わかりやすい解説

拍子【ひょうし】

音楽用語。音の進行に強拍と弱拍を知覚し,一定の法則で単位としたもの。楽譜では小節に一致。一般に,2拍子,3拍子,4拍子を単純拍子,同じ拍子が複合してできたものを複合拍子(6拍子,9拍子など),異なる拍子が混合してできたものを混合拍子(5拍子,7拍子など)という。混合拍子のうち5拍子(2+3,3+2など)の著名な例としてはチャイコフスキーの《悲愴交響曲》第2楽章が知られ,7拍子(4+3など)ではプロコフィエフの《ピアノ・ソナタ第7番》第3楽章(2+3+2)が有名。1小節または数小節ごとに拍子が変化する場合を変拍子といい,五線譜上では拍子の変化ごとに各小節に拍子記号が記されるのが通例。拍子記号は分数で書き,たとえば3/4は4分音符で3拍子を示す。→シンコペーションリズム
→関連項目五線譜

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拍子」の意味・わかりやすい解説

拍子
ひょうし

日本音楽用語。リズムにかかわる言葉であるが,音楽の種類や場合によって以下のような意味に用いられる。 (1) 拍,拍節,拍節法のこと。能には拍子不合 (ひょうしあわず) ,八拍子 (やつびょうし) などがある。三味線音楽や箏曲においては,表間裏間の2拍によって拍子1つ (1小節) とされ,ほとんどが2拍子である。 (2) リズム楽器の名称。雅楽の太鼓,笏拍子,能の四拍子 (しびょうし) など。 (3) リズム楽器の奏法とリズム型。雅楽においては,たとえば4小節あるいは8小節に1度太鼓が打たれ,その打つ回数により形式が示される。 (4) リズム楽器の奏者。

拍子
ひょうし
time; meter

西洋音楽用語。リズムに関する用語で,拍節的周期をもつ音楽の拍節的単位の量あるいは基準を表わす語。一般的には強拍,弱拍の配置により,単純拍子と複合拍子に分けられる。前者には2,3,4拍子がある。後者には,各拍が3つの小単位に分かれてできた6,9,12拍子やより複雑な5拍子 (2拍子+3拍子) ,7拍子 (3拍子+4拍子) などが含まれる。

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普及版 字通 「拍子」の読み・字形・画数・意味

【拍子】はくし・ひようし

リズム。

字通「拍」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の拍子の言及

【板】より

…地域,時代,ジャンルによって形態や名称が異なるが,(1)数枚の板を同時に打ち合わせるもの,(2)1枚の板を槌(つち)などで打つもの,に大別される。また,中国では拍子を意味する楽語としても用いられる。 (1)はおもに中国,朝鮮にみられる打楽器で,拍板,拍ともいう。…

【雅楽】より

…このほか,歩きながら演奏する道楽(みちがく)や竜頭鷁首(りようとうげきしゆ)の舟上で演奏する舟楽(ふながく)といった特殊な演奏形式のために工夫されたものもある。神道系祭式芸能と催馬楽とで歌の主唱者がうけもつ笏拍子(しやくびようし)も打楽器であるが,ふつうはこれを〈打ちもの〉とはいわない。
【楽理】
 大陸から楽舞とともにもたらされた理論や用語は,当初は実際の音楽と適合していたにちがいないが,やがて音楽のほうが変わってきたため,しだいに実態とかけはなれていった概念が多い。…

【タクト】より

…元来は,音楽の拍,拍子,小節などを指す言葉。ラテン語による15~16世紀の音楽理論書では,時間的秩序の基本単位としてタクトゥスtactusという概念が用いられ,タクトの語源となった。…

【間】より

…能の音楽の場合,演奏の焦点はむしろ休拍の置き方にあって,いかに〈間を数える〉かということが,技術の最高の秘伝とされているという。また,近世舞踊の場合にも,基本的には能の八拍子(やつびようし)にしたがいながら,拍子に乗りすぎることを嫌い,いかに〈間を抜く〉かが芸の眼目になっているといわれる。この精神は古く能楽の草創期にさかのぼり,世阿弥もまた,〈わざ〉と〈わざ〉との間隙(かんげき)を大切にして,いわゆる〈せぬひま〉をおもしろく見せるくふうを要求している。…

※「拍子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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