五私鉄疑獄(読み)ごしてつぎごく

改訂新版 世界大百科事典 「五私鉄疑獄」の意味・わかりやすい解説

五私鉄疑獄 (ごしてつぎごく)

田中義一内閣時代の鉄道相小川平吉裁可で認可した私鉄22線のうち,第56議会(1928)で明るみにでた私鉄14線の買収にからむ贈収賄事件。小川は,元政友会代議士春日俊文と共謀して,私鉄の買収,新線認可などの便宜をはかり,贈賄側の路線買収をもくろんだ北海道鉄道社長の犬上慶五郎,鉄道敷設免許を狙った伊勢電鉄取締役の伊坂秀五郎,同じく東大阪電鉄創立発起人総代田中元七,路線延長免許を申請していた奈良電鉄社長長田桃蔵,路線の一部買収を懇請した博多湾鉄道社長太田清蔵らとともに起訴された。裁判では,小川と春日の共謀の認否争点となった。一審では合計200万円を収賄したといわれる小川と春日の共謀関係は認められず,私鉄関係の被告15名全員は無罪となった。しかし,検事控訴の結果,1934年11月東京控訴院で,また大審院(1936年9月)でも伊勢電鉄,東大阪電鉄,博多湾鉄道の3件は有罪となり,小川,春日もともに懲役2年の判決を受けた。
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世界大百科事典(旧版)内の五私鉄疑獄の言及

【疑獄】より

…大正末から昭和初期の政党政治は,二大政党の交代による疑獄の顕在化をもたらした。満鉄疑獄事件(1921),松島遊廓疑獄(1926),陸軍機密費事件(1926),朝鮮総督府疑獄(1929),売勲事件(1929),五私鉄疑獄(1929)など,政友・民政両党をまきこんだ疑獄は枚挙にいとまがない。その後,斎藤実挙国一致内閣を崩壊させた帝人事件(1934)は,事件そのものが〈空中楼閣〉とされ全員無罪となった。…

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