日本国憲法によって最高裁判所が設けられる以前の,最上級裁判所。大日本帝国憲法は,司法権の範囲を民事と刑事に限定していたので,大審院は民事および刑事事件の終審裁判所であり,行政権に属する行政事件の管轄権を持たなかった(行政裁判)。また同憲法は司法権の枠内での特別裁判所の設置を認めていた。さらに大審院は,違憲立法審査権や裁判所の内部規律に関する規則制定権を持たず,また司法行政権(司法行政)は司法大臣に属していた。したがって,日本国憲法が,特別裁判所の設置を禁じ,最高裁判所を行政事件を含むすべての事件について唯一の終審裁判所としていることおよび,最高裁判所が上述の三つの権限を有しているのと対比される。要するに,大審院は立法権,行政権からの独立が不十分で,それらに対し優越していなかったのである。大審院は50名近い判事を擁し,大きく民事部と刑事部に分かれ,それらがさらにいくつかの部に分かれていた。大審院の判例を変更する場合には,判事全員により構成される連合部により審判が行われた。
→司法権の独立
執筆者:山本 弘
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1875年(明治8)に、民事・刑事の上告を受け上等裁判所以下の審判の不法なるものを破毀(はき)して全国法憲の統一を主持するところとして創設され、新憲法が施行されるまで存続した最高の司法裁判所をいう。主として、終審として、控訴院の裁判および地方裁判所が第二審としてなした裁判に対する上訴(上告・抗告)の審判、および第一審にして終審として、皇室に対する罪に関する刑法第73条(1947年削除)および第75条(同前)、内乱に関する第77条ないし第79条の罪の予審および裁判を行った。若干の民事部・刑事部が設けられ、各部では5人の判事からなる合議体が審判を行い、事件の性質によっては、民事の総部もしくは刑事の総部または民事および刑事の総部を聯合(れんごう)して審判を行った。大審院は現在の最高裁判所に相当するが、最高裁判所が司法行政監督権、規則制定権、違憲立法審査権をもつのに対し、大審院はこれらの権限をもたなかった。1921年(大正10)までの大審院判決録、1922年以後の大審院判例集がある。
[内田一郎]
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明治~昭和前期の最上級の裁判所。1875年(明治8)4月14日の立憲政体樹立の詔勅により設置され,官制上の順位は開拓使より高く諸省より低かった。90年に施行された裁判所構成法は改めて大審院を最高裁判所と規定し,7人構成の民事・刑事両部と判例変更のための連合部を設け,管轄を通常事件の上告,皇室に対する罪と内乱罪(一審が終審)と定めた。大審院長は勅任判事が親補されたが,司法行政権や下級裁判所に対する監督権はなかった。1913年(大正2)の改変,14年の裁判所構成法改正により各部の7人構成が5人に減じられ,大審院長は親任官に格上げされたが,国務大臣より宮中席次は低かった。47年(昭和22)の最高裁判所発足により廃止された。
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…東京都に置かれる(裁判所法6条)。 最高裁判所は,1947年5月3日に日本国憲法および裁判所法が施行されるとともに,それまでの大審院に代わるものとして発足した。大審院は,1875年に設置され,86年制定の裁判所官制のもとで一般の裁判に対する上告を審理する裁判所となったが,89年に発布された大日本帝国憲法および翌年施行された裁判所構成法のもと,司法権の独立を基礎とし司法作用の最高権限者としての性格をもつに至った。…
…当初はフランスのしくみを採り入れ,やがて明治憲法制定のころになるとドイツのあり方にも強い影響を受けた制度がつくられた。明治憲法下では,通常裁判所として大審院,控訴院,地方裁判所,区裁判所が置かれていたほか,前記のように各種の特別裁判所が置かれていた。現行憲法になると最高裁判所がアメリカに範をとって設立されたほか,特別裁判所が廃止されるなどの改革がなされた。…
※「大審院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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