変化舞踊(読み)へんげぶよう

百科事典マイペディア 「変化舞踊」の意味・わかりやすい解説

変化舞踊【へんげぶよう】

変化物とも。歌舞伎舞踊一種。短編舞踊をいくつも組み合わせ,一人の踊り手扮装を変え連続して踊り分ける組曲舞踊のこと。1697年水木辰之助〔1673-1745〕によって始められ,化政期に最も流行。三変化,五変化,七変化などがあったが,現在ではその一部分が独立して残っている作が多い。《越後獅子》《藤娘》《供奴》《汐汲》など。

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世界大百科事典(旧版)内の変化舞踊の言及

【歌舞伎】より

… 文化・文政期には舞踊にも目だった変化が現れた。変化(へんげ)舞踊(変化物)の大流行である。これは,元禄以来の一人一役柄の原則が崩れ,いくつもの役柄を兼ねて演じ分けることが名優の資格のように考えられるようになってきたこと,ケレン早替りの盛行が象徴するように,観客がスピーディな転換を好むようになったことなどの理由により,当然のごとく現れた現象である。…

【変装】より

…たとえば,〈眼千両〉といわれた名女方5世岩井半四郎のために4世鶴屋南北(大南北)が書き下ろした《お染の七役》と通称される作品(《お染久松色読販(うきなのよみうり)》)は,半四郎が一人で性や身分や年齢を異にする七役を演ずるように書かれている。文化・文政期には,一人の俳優が男役と女役とをとりまぜた何役にも変わる例がさかんとなり,それら市井の風俗を取り入れた踊りは〈変化(へんげ)舞踊〉と呼ばれた。また河竹黙阿弥は,《三人吉三》(《三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)》)や《弁天小僧》(《青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)》)などの,美女じつは女装した追いはぎ,武家娘じつは女装した刺青も鮮やかな白浪(しらなみ)といった,性の倒錯そのものの面白さを狙った官能美にあふれる名作を生み出し,そこでは両性具有の美貌のスターがおおいに活躍することとなった。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」