核疑惑(イランの)(読み)かくぎわく/いらんのかくぎわく(英語表記)discredit issues of Iranian nuclear project

知恵蔵 「核疑惑(イランの)」の解説

核疑惑(イランの)

イランの核開発が兵器製造を意図しているとする疑惑。パーレビ政権時代に開始された核開発と原発建設は、イスラム革命とイラン・イラク戦争中断の後、1995年からロシアの支援でブシェールの軽水炉2基を持つ発電所の建設が再開され、2006年中に完成の予定。イランは70年に核不拡散条約(NPT)に加盟、92年から国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れているが、02年8月に反体制勢力が秘密のウラン濃縮計画を暴露して国際的圧力が強まり、IAEAの査察が実施された。その結果、ナタンズの核施設でP‐1型ウラン濃縮装置が発見され、サンプル分析から高濃縮ウランが検出された。また濃縮装置はパキスタンのカーン博士を中心とする大規模な核の闇市場を通じて購入していた事実が明らかになった。イランは91年にIAEAに申告せずに中国からウラン濃縮原料を購入し、その一部が行方不明で、さらに高性能のP‐2型濃縮装置の部品を外国に発注していたものの、核兵器利用を目指した高濃縮実験を行っていたとする疑惑は解消された。しかし、IAEAに未申告でプルトニウム抽出をしていたことなどから、イランが核兵器の研究開発を進めているのではという疑惑はなお残り、05年7月に誕生したイランの新政権も「核の平和利用」を主張してウラン濃縮作業に着手。国連安保理での制裁行動も含め、いろいろな手段による解決が試みられている。

(江畑謙介 拓殖大学海外事情研究所客員教授 / 2007年)

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