核兵器
かくへいき
nuclear weapon
核分裂や核融合の際に発生するエネルギーを破壊力とする兵器。航空機から投下する爆弾やミサイルで撃ち込む弾頭などのかたちで使われる。核分裂兵器は原子爆弾として知られ,ウランやプルトニウムの原子核の分裂によって,また核融合兵器は水素爆弾または熱核爆弾と呼ばれ,重水素や三重水素の原子核の融合によってエネルギーを生ずる(→融合兵器)。ほとんどの核兵器は,核分裂と核融合を組み合わせている。核兵器は有史以来開発された爆発物のなかで最も大きな威力を有する。爆発のエネルギーの約 85%は爆風と衝撃波,熱放射となり,15%は爆発直後のおよそ 1分間に発せられる初期放射線と,一定期間放出され続ける残留放射線となる。放射線の一部は放射性降下物に含まれる。
1938年ドイツのオットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンが核分裂反応を発見。翌 1939年には,核分裂連鎖反応が莫大なエネルギーを発生し強力な兵器となりうることが明らかとなった。ナチス・ドイツが先行して核兵器を開発することが懸念されたため,アメリカ合衆国は本格的研究に着手,1942年マンハッタン計画を発足させ,1945年7月16日ニューメキシコ州アラモゴードで世界初の核兵器,プルトニウム原子爆弾の爆発実験に成功した。爆発威力は TNT火薬 2万1000t相当だった。同 1945年8月6日広島市にウラン235爆弾(→リトルボーイ)が,次いで 8月9日長崎市にプルトニウム239爆弾(→ファットマン)が投下された(→原子爆弾投下)。アメリカは 1941年熱核爆弾の研究も開始,1952年11月マーシャル諸島のエニウェトク環礁で水素爆弾の爆発実験に成功した。爆発威力は 10.4Mt,実験場には直径 1900m,深さ 50mの穴ができた。以後,小型軽量化と高性能化が進み,中性子爆弾も実用化された。ソビエト連邦は 1949年8月プルトニウム原子爆弾の実験に成功,1953年にはアメリカにさきがけて,実用的な水素爆弾の実験に成功した。
核兵器の恐るべき破壊力を危惧した各国は軍備管理を進め,1963年部分的核兵器実験禁止条約,1968年核兵器不拡散条約を締結した。アメリカは 1966年に 3万2000,ソ連は 1988年に 3万3000の核兵器を保有していたが,ともに冷戦終結に伴い数千発の弾頭の退役・撤去を行なった。ほかにイギリス,フランス,中国,インド,パキスタン,朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を保有しており,イスラエルも核保有国とみられている。また南アフリカ共和国,ブラジル,アルゼンチン,イラクは,開発計画があったものの,のちに計画を放棄した。(→核戦略)
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かくへいき【核兵器 nuclear weapon】
原子兵器atomic weaponともいう。核反応(核分裂および核融合)によって生ずるエネルギーを直接,破壊殺傷の目的に利用する兵器の総称。運搬手段(ミサイルなど)と核弾頭が分離できない構造の場合は運搬手段も含めて核兵器というが,核反応エネルギーを動力として用いる原子力潜水艦等は含まない。核兵器は,エネルギーを放出するおもな核反応が核分裂であるか核融合であるかによって,核分裂兵器と核融合兵器とに二大別される。
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かくへいき【核兵器】
核反応によって、核エネルギーを爆発的に放出するようにした兵器の総称。原子爆弾や水素爆弾、核弾頭を装着したミサイルなど。 →
戦術核 ・
戦略核
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かく‐へいき【核兵器】
〘名〙 核分裂反応を利用した原子爆弾、核融合反応を利用した水素爆弾などの兵器。
※問答有用(1951‐61)〈徳川夢声〉
宮本顕治「核兵器をつかっての戦争は絶対にごめんこうむりたいということは」
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世界大百科事典内の核兵器の言及
【核戦略】より
…第2次世界大戦の終末期に広島,長崎で使用された核兵器は,在来の兵器に比べてけたはずれの破壊力を持つために,旧来の戦略思想を一変させた。核兵器はその巨大な破壊力のために〈究極兵器〉と呼ばれ,その使用は人類の破滅につながるので,戦争はできなくなったと見るものまでいた。…
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