餌づけ(読み)えづけ

改訂新版 世界大百科事典 「餌づけ」の意味・わかりやすい解説

餌づけ (えづけ)

餌づけという言葉が今日普及するに至ったのは,野生ニホンザルの餌づけに端を発している。1952年に宮崎県日南海岸の幸島で,生態学的な研究の目的で餌づけられたのが最初であるが,その後大分市高崎山をはじめ各地で観光等の目的で餌づけがおこなわれた。英語ではprovisionizationあるいはfeedingと呼ばれている。人が動物に投与する餌を介して,動物の人に対する恐怖心や警戒心を取り去り,至近距離からの観察を容易にする方法で,個体識別による長期観察を可能にした。餌づけは,野生状態の動物を馴化(じゆんか)するhabituation(人づけ)の一手段と考えてよいが,純野生の生態をゆがめるというので批判もある。今日では,北方から渡ってくるツルハクチョウユリカモメなどにも投餌がなされ,餌づけと呼ばれている。餌づけは,野生動物の保護管理の目的にも用いられるが,対象となる動物は記憶力など高度な知的能力をもつ動物に限られる。
個体識別法
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android