日本大百科全書(ニッポニカ) 「アザンクールの戦い」の意味・わかりやすい解説
アザンクールの戦い
あざんくーるのたたかい
百年戦争の後期、1415年に行われた戦闘。アザンクールAzincourtは北フランスのカレー南東50キロメートルの小村。1410年代、アルマニャック派とブルゴーニュ派の抗争に明け暮れるフランスに、イングランドのランカスター王家が攻勢をかけた。1415年8月、ヘンリー5世が3万の軍勢をノルマンディーに上陸させたのである。しかし悪疫流行のため1万の人員を失ったヘンリーは、冬越しのため、カレーに向かって北上した。カレーはすでにイングランド王家の支配地であった。アルマニャック派の構成した6万のフランス王軍がこれを迎撃した(10月25日)。王家から給与を支払われる槍(やり)隊と弓隊を機能的に組み合わせたイングランド軍が、領主貴族の提供する旧態依然たる重装騎士を主力としたフランス軍に勝った。フランス側の死者は1万、うち騎士7000。イギリス側の損害は1500。アルマニャック派の盟主オルレアン侯シャルル(詩人シャルル・ドルレアン)は捕虜となった。以後アルマニャック派は退潮し、ブルゴーニュ侯が発言権を増した。ノルマンディーはイングランド王家の占領地となった。
[堀越孝一]