改訂新版 世界大百科事典 「アシナガコウモリ」の意味・わかりやすい解説
アシナガコウモリ
funnel-eared bat
虫食性で後肢が異常に細長く,体色が鮮やかな翼手目アシナガコウモリ科アシナガコウモリ属Natalusに属する哺乳類の総称。メキシコからブラジルまでと西インド諸島に分布し,1属8種がある。キューバ,ジャマイカ,イスパニオラの各島に分布するオオアシナガコウモリN.majorは体長5cm,前腕長4cm,体重10g前後。後肢と尾は体長よりも長く,飛膜は比較的幅広い。耳介は先端がとがった漏斗形で,耳介の前方にある耳珠(じしゆ)は三角形。吻(ふん)が細長く,眼は小さくほとんど毛に隠れる。鼻葉(びよう)はなく,雄の吻には知覚細胞状の細胞からなる特有の器官がある。体毛は長く羊毛状で,体背面は鮮やかな黄褐色。日中の休息場所は標高900m以下の低地にある湿度が高い大きな洞窟で,その奥に群れをなし,各個体は7~10cmの間隔をおいて,片脚でぶら下がっている。虫食性で小型の昆虫を好み,比較的低空を170kHzの超音波を口から出しながら,ガのように飛翔(ひしよう)し採食する。繁殖期は1~6月。他のアシナガコウモリは形態は本種に酷似するが,小型で最小のものでは体長3.5cmにすぎない。毛色は灰色,淡灰黄褐色,赤褐色,暗褐色と種によって異なる。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報