改訂新版 世界大百科事典 「アズハル」の意味・わかりやすい解説
アズハル
al-Azhar
エジプトのカイロにある古いモスク(970設立)とそれに付随するマドラサ(972設立)とからなり,現存するイスラム最古の最高学府とされている。マドラサは全イスラム世界からの長年のワクフ財産によって運営されてきたが,イスラム世界でアラビア語が衰退したオスマン帝国下においても存続し,よく伝統的アラブ・イスラム諸学を今日に伝えた。大学は1936年の法令によってモスクより分離し,イスラム法学部,神学部,アラビア語学部(伝統3学部)として新たに再編成された。アズハルはエジプト各地に付属の中等部(4年)や高等部(5年)を傘下に置いていたが,61年の法令により,普通高校出身者の入学も可能となった。現在では〈信仰と労働〉をモットーに,女子部も含めて医学部,工学部をはじめ13学部を数える総合大学に変わった。アズハル大学はエジプト人の子弟ばかりでなく,全イスラム世界の子弟の教育を行う使命がある。このために創立以来多くの外国人留学生をかかえ,最近では常時約3000人の外国人留学生が在籍し,その卒業生(アズハリー)はイスラム世界の宗教指導者や裁判官,各地のイスラム大学の教授やアラビア語教師として活躍している。
執筆者:飯森 嘉助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報