アナテクシス(その他表記)anatexis

岩石学辞典 「アナテクシス」の解説

アナテクシス

この語の解釈には違った意味のあるものがある.ゼーダーホルム既存岩石が部分的に再熔融する過程をよんだが[Sederholm : 1907, Tomkeieff : 1983, Ashworth : 1985],その後既存の岩石が熔融することとする考えがある[Mehnert : 1968, Bowes ed. : 1989].広範囲にわたって地殻物質が熔融してマグマを作る作用で,堆積岩などが地殻下部で温度の上昇やH2Oの存在によって部分的に熔融し,形成された液が集合してマグマとなると考えられている.マグマの形成はその部分の地殻の全部が熔融しても部分的な熔融でもアナテクシスという[片山ほか : 1970].アナテクシスは深部の岩石が下からの熱やH2Oなどのガスで再熔融し,その場でマグマが形成されるような超変成作用をいう.岩石は一定圧力で温度が上昇するか,または一定温度で圧力が下がって一部または不完全に熔融する.熔融は粒界から始まり,一部融けた岩石系から熔融物が抽出されるか,そのまま系に留まるかする.代表的なアナテクシスは地殻から花崗岩の熔融体が発生する場合で,またマントル橄欖(かんらん)岩の部分熔融玄武岩が発生することなどが考えられている.既存の岩石が選択的あるいは部分的に熔融して,その場所で熔融による脈が発達する.ギリシャ語のanaは全く,ほとんど,tekeinは融かす,熔融するの意味.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアナテクシスの言及

【変成作用】より

…これより高い温度では,水分を含んだ岩石は融解がはじまり,連続的にマグマがつくられる。この現象はふつうアナテクシスanatexisと呼ばれ,このようにしてできた岩石はミグマタイト(混成岩)と呼ばれる。また低い温度では再結晶作用が著しくゆっくりと進行するため,見かけ上ほとんど変成作用は起こらない。…

※「アナテクシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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