日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリ・パシャ」の意味・わかりやすい解説
アリ・パシャ
ありぱしゃ
Ali Pasa, Tepelenë
(1741―1822)
アルバニア出身のオスマン・トルコ帝国の総督。南部アルバニアのテペレナTepelenëの首長の子。バルカン南部に広範な勢力圏を形成し、後のバルカンの独立運動に貢献した。初めルメリア地方で将校になり、ロシア・トルコ戦争で武勲をたてて、トリカラ、ついでヤニナJanina (Ioannina)の州総督に任命された。その前後から商業で成功し、トルコ皇帝にしきりに進貢するとともに、強襲、陰謀、暗殺などの手段を駆使して勢力圏を拡張、「ヤニナのライオン」とよばれた。その勢力圏は、19世紀初頭にかけて現在のギリシア、アルバニア、マケドニアに及び、事実上独立帝国の観を呈した。イギリス、フランス、ロシアなどの列強もアリを主権者として扱い、彼もそれらの力を利用した。1820年にトルコ政府は彼を総督から追放、大軍を討伐に差し向けた。彼はバルカン諸民族の独立闘争に支えられ、ヤニナにこもって2年間戦ったが、1822年2月5日に殺された。
[木戸 蓊]