現代では,戸外にある木製の簡単な構造の戸をさすが,古代・中世には柵戸,ないし城戸と書かれ,柵や城郭の出入口を意味した。ついで近世では,城下町の郭内への出入口などの軍事的要素の強い門のこともいうが,主として江戸・大坂などの大都市の表通りの町境の要所に設けられた門のことを意味するようになる。この木戸は,大きな町では1町単位,中小の町では数町単位で設置され,江戸の場合,その形態は,2間ほどの間隔で建てた柱の間に,両開きの扉をつり,両脇には道路際までの柵,または板塀がとりつき,そばには木戸番の番小屋があった。夜四つ時(午後10時)から朝六つ時(午前6時)までの夜間は閉じられ,木戸番の監視のもとに,脇の小木戸(またはくぐり戸)からのみしか通行できなかったので,犯罪人の逃亡防止に役だち,打ちこわしなど不穏な事態の際も,この要所の木戸を閉じることにより,他地域への波及を食い止めようとするなど,都市の治安維持の役割が大きかった。なお,芝居や相撲など見世物興行の際の観客の出入口も木戸という。この場所で客寄せのための口上をいう番人も木戸番,見物料を木戸銭という。
執筆者:玉井 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古代~中世では柵・城郭といった防御施設の門をいう。戦国期の京都では町を防衛するため町境の道路上に設けられた。近世になると,各地の都市で両側町の道路の両端に設置された。木戸には番屋が付属し木戸番が居住した。木戸の機能は第一に治安維持であり,夜間と打ちこわしのような緊急時には閉ざされた。重要な町共同体施設のため町入用によって維持された。陸奥国仙台や伊予国松山などのように個別町ごとには木戸がなく,城下町の入口や武家地と町人地の境などにのみ木戸が設置されている都市もある。城下町以外の都市や都市的集落では,都市であることの象徴としての役割も担った。なお芝居小屋の出入口なども木戸という。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…鎌倉時代の京都では,辻ごとに篝屋(かがりや)が置かれ,終夜篝火をたいて盗賊を防ぎ市中を守ったし,戦国時代になると,公家や町衆がみずから釘貫(くぎぬき)(門)や櫓を構築して町を自衛した。江戸時代には,町内ごとに木戸門をたて,夜間には通行を遮断した。木戸門脇には髪結床があり,また塵芥箱が置かれていた。…
…南北朝,室町時代については不明な点が多い。【飯田 悠紀子】 江戸時代は町の両端に木戸が設けられており,夜間はこの木戸を閉鎖して不審な者の通行を規制し,盗難の防止や防火に努めた。江戸では,木戸番(番太郎と呼ばれる)が夜10時で木戸を閉め,それ以後の通行人は潜(くぐ)り戸から通し,不審者は直ちにつかまえた。…
※「木戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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