木戸(読み)キド

デジタル大辞泉 「木戸」の意味・読み・例文・類語

き‐ど【木戸/城戸】

(木戸)庭などの出入り口に設けた簡単な開き戸。「裏―」
(木戸)興行場などの客の出入り口。
木戸せん」の略。「―御免
城やさくなどの門。
江戸時代市中要所、町々の境界に設けられた警衛のための門。
[類語]ドアシャッター雨戸格子戸網戸開き戸引き戸繰り戸大戸妻戸切り戸潜り戸枝折り戸鎧戸門戸門扉

きど【木戸】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「木戸」姓の人物
木戸幸一きどこういち
木戸孝允きどこういん
木戸孝允きどたかよし

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精選版 日本国語大辞典 「木戸」の意味・読み・例文・類語

き‐ど【木戸・城戸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (さく)に作った門。
    1. [初出の実例]「唯木戸のみぞ是れ掖月の吉き戸」(出典:古事記(712)中)
  3. 城門。城の入口。また、転じて城のこと。
    1. [初出の実例]「引籠于当所衣笠城、各張陣〈略〉西木戸和田太郎義盛」(出典:吾妻鏡‐治承四年(1180)八月二六日)
  4. 関所の門。
    1. [初出の実例]「守の其関を入に、供の人を書立て、次第に関を入て、入れ畢(はて)て後にぞ木戸を閇(たて)ける」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
  5. 江戸時代、江戸市中の表通りの町々の境にたてた門。保安、取締りのために設けられた町木戸。また、街道筋に当たる所には、これの大きなものがあった。大木戸。
    1. [初出の実例]「江戸中を手に入るると云愚按の仕方は、武家屋鋪も町方の如く一町一町に木戸を付け、木戸番を置き」(出典:政談(1727頃)一)
  6. 庭や露地に設けられた簡単な開き戸。また、その出入口
    1. [初出の実例]「なるほど田舎は気楽なものだ。入口の木戸を〆りゃア裏ぐちは行抜でもかまはねへとは」(出典:人情本・春色恵の花(1836)初)
  7. 芝居などの興行場に設けられた客の出入口。
    1. [初出の実例]「初芝居あしたことにや木戸の番〈東竹〉」(出典:俳諧・桜川(1674)春)
  8. きどせん(木戸銭)」の略。
    1. [初出の実例]「木戸は五十銭だヨ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
  9. きどばん(木戸番)」の略。
    1. [初出の実例]「惣座中は申におよばず、木戸半畳(はんじやう)、やぐらだいこを打ます」(出典:浮世草子傾城色三味線(1701)鄙)

きど【木戸】

  1. 姓氏の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「木戸」の意味・わかりやすい解説

木戸 (きど)

現代では,戸外にある木製の簡単な構造の戸をさすが,古代・中世には柵戸,ないし城戸と書かれ,柵や城郭の出入口を意味した。ついで近世では,城下町の郭内への出入口などの軍事的要素の強い門のこともいうが,主として江戸・大坂などの大都市の表通りの町境の要所に設けられた門のことを意味するようになる。この木戸は,大きな町では1町単位,中小の町では数町単位で設置され,江戸の場合,その形態は,2間ほどの間隔で建てた柱の間に,両開きの扉をつり,両脇には道路際までの柵,または板塀がとりつき,そばには木戸番の番小屋があった。夜四つ時(午後10時)から朝六つ時(午前6時)までの夜間は閉じられ,木戸番の監視のもとに,脇の小木戸(またはくぐり戸)からのみしか通行できなかったので,犯罪人の逃亡防止に役だち,打ちこわしなど不穏な事態の際も,この要所の木戸を閉じることにより,他地域への波及を食い止めようとするなど,都市の治安維持の役割が大きかった。なお,芝居や相撲など見世物興行の際の観客の出入口も木戸という。この場所で客寄せのための口上をいう番人も木戸番,見物料を木戸銭という。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「木戸」の解説

木戸
きど

古代~中世では柵・城郭といった防御施設の門をいう。戦国期の京都では町を防衛するため町境の道路上に設けられた。近世になると,各地の都市で両側町の道路の両端に設置された。木戸には番屋が付属し木戸番が居住した。木戸の機能は第一に治安維持であり,夜間と打ちこわしのような緊急時には閉ざされた。重要な町共同体施設のため町入用によって維持された。陸奥国仙台や伊予国松山などのように個別町ごとには木戸がなく,城下町の入口や武家地町人地の境などにのみ木戸が設置されている都市もある。城下町以外の都市や都市的集落では,都市であることの象徴としての役割も担った。なお芝居小屋の出入口なども木戸という。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木戸」の意味・わかりやすい解説

木戸
きど

もと城塞の出入口,のちに街路庭園,住居などの出入口で,屋根がなく,開き戸のある木の門をいう。江戸時代には武家屋敷と町屋敷の境にあって番所を併設した門や,芝居など興行場の出入口をも木戸といった。木戸の通過に木戸銭をとり,これを木戸と略称することもあって,これを免除されたものを木戸御免といった。

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世界大百科事典(旧版)内の木戸の言及

【辻】より

…鎌倉時代の京都では,辻ごとに篝屋(かがりや)が置かれ,終夜篝火をたいて盗賊を防ぎ市中を守ったし,戦国時代になると,公家や町衆がみずから釘貫(くぎぬき)(門)や櫓を構築して町を自衛した。江戸時代には,町内ごとに木戸門をたて,夜間には通行を遮断した。木戸門脇には髪結床があり,また塵芥箱が置かれていた。…

【夜警】より

…南北朝,室町時代については不明な点が多い。【飯田 悠紀子】 江戸時代は町の両端に木戸が設けられており,夜間はこの木戸を閉鎖して不審な者の通行を規制し,盗難の防止や防火に努めた。江戸では,木戸番(番太郎と呼ばれる)が夜10時で木戸を閉め,それ以後の通行人は潜(くぐ)り戸から通し,不審者は直ちにつかまえた。…

※「木戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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