日本大百科全書(ニッポニカ) 「ある母親の話」の意味・わかりやすい解説
ある母親の話
あるははおやのはなし
Historien on en Moder
アンデルセンの童話。『新童話集』第2巻(1848)に収録。わが子を死神に連れ去られた母親が、身を傷つけながらその後を追い、ついに、死神が神に委託されてすべての人間の生命の象徴である草や木を管理している大温室にたどりつく。そこで死神から、人の生と死はいっさいが神の御心のままであることをさとされ、1人の子の母という立場から、すべての人の子の母親という自覚にまで高められて、子の生命を神の御手にゆだねる。無垢(むく)のまま夭逝(ようせい)する子供を、むしろ幸福とする考え方がうかがわれ、子供を失った親たちを大いに慰めた作で、非常に好評だった。
[山室 静]