改訂新版 世界大百科事典 「アーブー山」の意味・わかりやすい解説
アーブー[山]
Ābū
西インド,ラージャスターン州南西部にあるジャイナ教およびヒンドゥー教の聖地。最高峰のグルシカル峰は標高1722mあり,1200mを超える山頂部に町が開け,避暑地としても知られている。山奥のディルワーラーにあるジャイナ教寺院群のうち,ビマラ・バサヒー寺は1031年ダンダナーヤカ・ビマラによって,ルーナ・バサヒー寺は1230年テージャハパーラによって建てられた。すべて白大理石製の両寺は,よく似た構成になり,内側に小祠堂の並ぶ回廊がビマーナ(本殿)vimāna,前殿maṇḍapa,玄関ardhamaṇḍapaを囲んでいる。外観は簡素であるが,内部は彫刻装飾によって華麗をきわめる。特に吹放ちの玄関の8本の柱で支えられたドーム天井には,繊細な花模様の彫刻がシャンデリアのように垂れ下がり,技巧の極致を示す。華麗なソーランキーSolaṅkī朝建築の白眉である。
執筆者:肥塚 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報