日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャンデリア」の意味・わかりやすい解説
シャンデリア
しゃんでりあ
chandelier
室内照明器具の一形式で、多灯式の吊下(つりさ)げ灯をさす。語源は、古代の吊り灯を意味するラテン語candelabrumである。今日では一般に、装飾性の強い、分岐式の多灯天井灯に用いられる。
[友部 直]
歴史
シャンデリアの祖形としては、複数のオイル・ランプを木枠などに固定して吊り下げた形式が想定されるが、遺例は現存しない。ヘレニズム時代に、照明器具が室内装飾としても重視されるようになり、装飾的な吊り灯形式の照明が発達した。ポンペイ出土の照明器具のなかには、架台に吊って用いられたブロンズ製のさまざまな形式のものがあり、後世のシャンデリアへの発展の一段階を示す。ローマ時代から中世にかけては、土製、ガラス製のランプを吊り下げることも広く行われた。中世には、オイル・ランプに加えてろうそくも普及し、シャンデリアの形式にも重要な影響を与えた。とくに16世紀以降、世俗的な君主や富裕な市民たちは、宮殿や邸宅の広間を豪華なシャンデリアで飾った。この傾向は、18世紀フランスのロココ様式においてその頂点に達し、芸術的にもきわめて優れたものが生まれた。
当時もっとも高く評価されたものはベネチア産のガラス製シャンデリアであり、各国の宮廷は競ってこれを用いた。透明ガラスのドロップ(垂れ飾り)を活用し、光の反射と屈折による壮麗な空間を演出している。また、ドイツのマイセンやイタリアのカポ・デ・モンテなど高級磁器の製作地は、磁器製シャンデリアの生産にも進出し、名声を得た。19世紀以降、電灯が導入されたが、シャンデリアの基本形式はさして変わらず、とくに劇場、ホテル、宴会場など、娯楽性や趣味性の強い大空間の照明に大きな役割を果たしている。
[友部 直]