翻訳|chandelier
照明器具の一種。フランス語ではシャンドリエと読み,chandelle(ろうそく)を立てて使うものという意味であるが,chandelleの語源はラテン語のカンデレcandere(輝く,明るくする)に発しており,キャンディレブラム(多枝灯)やカンテラ(手提灯)と同種の派生語。広くろうそくを立てて使う燭台を意味するが,日本ではシャンデリアが意味するものはそれとは異なり,天井より吊り下げて使う多灯型照明具を指している。
多灯式吊灯(シャンデリア)の歴史は古く,現存する最古のものではエトルリアの青銅製オイル・ランプ(前4~前3世紀)が知られているが,ローマ時代にはある程度の普及をみせたらしく,数多くの遺品が現存している。ろうそくを立てる形式のシャンデリアは,おそらくろうそくの始まりとともに始まったと思われるが,現存の例では,ストックホルム国立博物館所蔵の青銅のものやミュンヘンのアルテ・ピナコテーク所蔵の鹿角製のものなど14~15世紀のものが多い。16世紀に入ると,寺院や宮殿で一般的に使われる照明器具となり,素材も金属製のほか木製,ガラス製,陶磁製など,豪華な装飾を施したものが流行した。
シャンデリアの使用は,広い室内を照明することが目的であったから,建造物の中心的な場所に使われることが多い。そのために装飾効果が重要な機能として与えられることになり,形式はだんだんと美化され,すぐれた造形のものが作られるようになった。イタリアのピサ大聖堂の〈ガリレイのシャンデリア〉(1584)と呼ばれる青銅彫刻製のものやベルサイユ宮殿の水晶製のもの,イタリアのムラノ島で製作された同島のガラス美術館所蔵の華麗な色ガラス製のもの(ベネチア・ガラス)などは,その代表的な例である。
日本でのシャンデリアの使用は,天井の高い洋風建築の導入とともに始まり,初めはキリスト教会などの建物に使用されたが,一般化してきたのは洋風建築が多く建てられるようになった明治初期からであった。官公庁の建物のホールや鹿鳴館のホールを飾ったものはその典型例であった。現存するものでは,旧赤坂離宮(現,迎賓館)の舞踏室のものが代表的である。シャンデリアは,当初は鎖などで上下できるように吊っていたが,重量化が進み,また電灯を使用するようになってから,天井に取りつけたままの形式に変わってきた。
執筆者:由水 常雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
室内照明器具の一形式で、多灯式の吊下(つりさ)げ灯をさす。語源は、古代の吊り灯を意味するラテン語candelabrumである。今日では一般に、装飾性の強い、分岐式の多灯天井灯に用いられる。
[友部 直]
シャンデリアの祖形としては、複数のオイル・ランプを木枠などに固定して吊り下げた形式が想定されるが、遺例は現存しない。ヘレニズム時代に、照明器具が室内装飾としても重視されるようになり、装飾的な吊り灯形式の照明が発達した。ポンペイ出土の照明器具のなかには、架台に吊って用いられたブロンズ製のさまざまな形式のものがあり、後世のシャンデリアへの発展の一段階を示す。ローマ時代から中世にかけては、土製、ガラス製のランプを吊り下げることも広く行われた。中世には、オイル・ランプに加えてろうそくも普及し、シャンデリアの形式にも重要な影響を与えた。とくに16世紀以降、世俗的な君主や富裕な市民たちは、宮殿や邸宅の広間を豪華なシャンデリアで飾った。この傾向は、18世紀フランスのロココ様式においてその頂点に達し、芸術的にもきわめて優れたものが生まれた。
当時もっとも高く評価されたものはベネチア産のガラス製シャンデリアであり、各国の宮廷は競ってこれを用いた。透明ガラスのドロップ(垂れ飾り)を活用し、光の反射と屈折による壮麗な空間を演出している。また、ドイツのマイセンやイタリアのカポ・デ・モンテなど高級磁器の製作地は、磁器製シャンデリアの生産にも進出し、名声を得た。19世紀以降、電灯が導入されたが、シャンデリアの基本形式はさして変わらず、とくに劇場、ホテル、宴会場など、娯楽性や趣味性の強い大空間の照明に大きな役割を果たしている。
[友部 直]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…なお手持ちの燭台を手燭(てしよく)といい,銅製のものが多く作られた。【岡田 譲】
[西洋]
英語でキャンドルスティックcandlestick,フランス語でシャンドリエchandelierという。厳密にはキャンドルスティックはろうそく1本立てのものをいい,それ以上の大型のものはキャンディレブラムcandelabrumとよばれている。…
…ただし後者はろうそく用に限らず,灯油ランプ用のものに対しても用いられる。また,イギリスでは天井からつるす大型の灯器をシャンデリアといい,この語もろうそく用に限らず,ガス,電灯用のものについても用いられる。17~18世紀に盛んであった壁面に取り付けるブラケット形燭台はスコンスsconceとよばれる。…
※「シャンデリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新