大学事典 「イェール・レポート」の解説
イェール・レポート
古典教育から有用な教育への転換を理事に提起されたイェール・カレッジが,学長デイ,J.(Jeremiah Day)と古典語教授キングスレー,J.(James Kingsley)を著者として,1828年に公表したカレッジ教育擁護論。当時のアメリカ合衆国で最大数の学生(470名)が在籍し,影響力も強かったイェールが,有用な教育からの挑戦を受け,能力心理学の立場から「精神の鍛錬と知見」を中核とするカレッジ教育の優越を宣言した記念碑的な声明となった。最近では,上記2名と理事会が著した3部からなる同文書を,イェールのReports(複数形)と表記する場合がある。内容的にも,キングスレーの第2部は,カレッジ教育の根本に古典語の教育を据える伝統的な論を展開したのに対し,数学者・科学者の学長デイの第1部は,カレッジ教育の目的を,科学と文芸の諸原理をあらゆる職業の根本基盤として,徹底的に訓練することと定式化した。カレッジ教育を神・法・医の旧専門職のみでなく,農・工・商にも不可欠な前提と主張したのである。邦訳は,国際基督教大学『教育研究』43号(2001年)および46号(2004年)所収(立川明,新井元,村瀬泰信共訳)。
著者: 立川明
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報