改訂新版 世界大百科事典 「イギリス鉄鋼公社」の意味・わかりやすい解説
イギリス鉄鋼公社 (イギリスてっこうこうしゃ)
British Steel Corp.
1963年のイギリスの鉄鋼業国有化に伴い,鉄鋼法Iron & Steel Actにより国内の主要鉄鋼会社14社とその子会社を統合し,67年3月発足した世界有数の鉄鋼一貫メーカー。BSCと略称する。BSC設立の目的は,ヨーロッパ大陸や日本に比べて近代化に遅れをとったイギリス鉄鋼業の再建と,国際競争力の強化にあった。具体的には,(1)国家資金の投入による設備の近代化,(2)新鋭製鉄所への生産の集中と旧製鉄所の廃止,余剰人員整理による労働生産性の向上,(3)工場の地域別・品種別の統合と再編成による国際競争力の向上,をめざした。しかし,労働組合の人員整理に対する反対などによって設備の近代化は進まず,一方,75年以来の鉄鋼不況によって赤字が増大したために,イギリス政府は82年までに53億ポンドの巨額の資金を投入せざるをえなかった。BSCの再建が困難な理由は,(1)政府の強い介入と14社の統合体からくる管理の難しさ,(2)大幅な人員整理(成立時の従業員27万人を83年までに7万人にする)に対する労働組合の強い反対運動である。82年時点では粗鋼生産量1140万tでイギリス全体の約8割を占め,共産圏を除き世界4位であったが,88年,〈ブリティッシュ・スチールBritish Steel,P.L.C〉として民営化された。
執筆者:下田 雅昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報