BSC(読み)びーえすしー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「BSC」の意味・わかりやすい解説

BSC
びーえすしー

経営を(1)財務、(2)顧客、(3)業務プロセス、(4)人材の学習と成長、の四つの視点から分析・評価する管理手法。英語のBalanced Scorecardの略語である。ハーバード・ビジネス・スクール教授のロバート・キャプランRobert S. Kaplan(1940― )と経営コンサルト会社社長のデビッド・ノートンDavid P. Norton(1941― )が共同で提唱した経営手法で、1992年のハーバード・ビジネス・レビュー誌に初めて発表された。BSCでは、最終目標としてのKGI(重要目標達成指標)を決め、その目標を実現する手段としてCSF(主要成功要因)を選択し、財務、顧客、業務プロセス、人材の学習と成長、の四つの視点からそれぞれ正しく目標に向かって手段が機能しているかどうかをKPI重要業績評価指標)で点検するという手法がとられる。たとえばKGIとして「3年後の業界シェア25%」という目標を設定して、CSFとして新製品発売を選択し、KPIとして財務ではコスト管理、顧客では引き合い件数、業務プロセスでは生産性、人材の学習と成長では勤怠率をチェックするという手法がとられる。つまりBSCは経営全般の可視化を基本理念としており、組織内のあらゆる部署に対して戦略の目的と目標を徹底できる利点がある。またBSCでは戦略マップというチャートを活用し、四つの視点の間の相互関係を整理しながら、目標の漏れや重複を避ける手法がとられる。これにより、組織の縦割り弊害を打破できるという利点があるとされる。

 従来の予算管理や中期経営計画といった経営手法は、売上高や利益率といった財務分析に偏りがちであった。BSCは顧客満足度や期日内納品などといった顧客の視点、品質向上や生産性といった業務プロセスの視点、経営ノウハウや従業員のやる気といった人材の学習と成長の視点を加味することで、企業のもつ資産を総合的に評価できる利点がある。BSCは欧米の企業で広く普及しており、日本でも2000年代以降、大企業を中心に採用する企業が増えている。

[矢野 武 2016年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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