改訂新版 世界大百科事典 「イネシンガレセンチュウ」の意味・わかりやすい解説
イネシンガレセンチュウ
white-tip nematode of rice
Aphelenchoides besseyi
イネの重要有害センチュウ。アフェレンコイデス科のセンチュウ。雌雄同形で,体長0.7mm前後の糸状。乾燥種もみの中で4年以上生存し,播種(はしゆ)後泳ぎ出して幼苗の葉鞘(ようしよう)内側に侵入する。組織に侵入することなく生長点付近で外部寄生的に栄養を摂取し,増殖する。センチュウの寄生を受けたイネでは,とくに止葉(とめば)の先端部分が黄白色~灰白色となり,細くよじれて,しばしばブタの尾のように巻く。その他の葉の先端も黄色くなる場合が多く,これが夕方など薄暗い中で風にそよぐさまは,ちょうど葉に止まったホタルが揺れているように見えるところから〈ホタルいもち〉とも呼ばれる。センチュウは出穂・開花期に穎(えい)の内部に入り,加害,増殖する。被害株は草丈が低下し,無効茎が多くなり減収する。被害粒にはしばしばくさび形の褐~黒点が入り,コメの検査等級が下がる。被害種もみを用いないことが肝要で,種もみの温湯または薬液浸漬(しんし)処理が著効を示す。
執筆者:稲垣 春郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報