改訂新版 世界大百科事典 「イブンアルハティーブ」の意味・わかりやすい解説
イブン・アルハティーブ
Ibn al-Khaṭīb
生没年:1313-75
ナスル朝の宰相(ワジール)であり,歴史家,詩人。グラナダの近郊で生まれ,グラナダで学ぶ。ユースフ1世に仕え,書記官の後1349年宰相位につき,次のムハンマド5世のもとでも宰相位にあったが,王の廃位とともに彼も投獄される(1358・59)。解放後,王といっしょにモロッコに渡る。62年王の復位とともに,宰相位に復したが,宮廷内の陰謀を察知,モロッコへ逃れる(1371・72)。しかし,王の死後まもなくグラナダに召喚され,獄死した。モロッコ亡命中にイブン・ハルドゥーンと知りあい,彼のグラナダ移住を歓迎するなど親交を結んだ。また両者は学問上のよきライバルでもあった。歴史,地理,詩,医学など多様な分野の作品を多数執筆したが,代表作は《グラナダ史》。
執筆者:私市 正年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報