日本大百科全書(ニッポニカ) 「イリク・ハガン」の意味・わかりやすい解説
イリク・ハガン
いりくはがん
Ilig Khaghan
(?―552ころ)
突厥(とっけつ)の始祖。伊利可汗と音写される。本名は、オルホン碑文ではブミン、中国史書では土門とよばれている。突厥の阿史那(あしな)氏族の族長として、柔然(じゅうぜん)に服属していた。その住地であるアルタイ山脈地域が、東西交易ルート(ステップ・ルート)の中枢を押さえていたため利益を受け、しだいに強大になり、545年には中国の西魏(せいぎ)と絹貿易を開始した。やがて付近のトルコ系諸族を征服し、西魏から長楽公主を降嫁され、ついに552年、柔然を攻撃してその可汗を自殺させ、可汗位について伊利可汗と称した。これが突厥帝国の始まりである。イリク・ハガンとは「国家を支配する可汗」を意味する。
[護 雅夫]