改訂新版 世界大百科事典 の解説
ウァレンティニアヌス[1世]
Flavius Valentinianus I
生没年:321-375
ローマ皇帝。在位364-375年。パンノニア出身の軍人で,ヨウィアヌス帝の死後軍隊により帝位に擁立された。弟ウァレンスを共治帝とし,自身は西方を統治。主としてトリエルに宮廷を置き,ライン上流のゲルマン諸族と戦って北方辺境の防衛を再建。スコット,ピクト,サクソン諸族のブリタニア侵入やアフリカでのムーア人蜂起は,テオドシウス(テオドシウス1世の父)を起用して撃退した。375年クアディ族の侵入を受けたイリュリクムへ赴き,11月クアディ族の使者と会見中,卒中で死去。正統派のキリスト教徒であったが,宗教問題には寛容・不干渉政策をとった。また属州出身者を重用して元老院議員貴族層と対立し,行政の綱紀粛正と担税者保護を図って都市擁護官の制度を拡張した。
執筆者:後藤 篤子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報