化学辞典 第2版 「ウェイド則」の解説
ウェイド則
ウェイドソク
Wade's rule
ボランの骨格構造と,骨格内の結合電子数の関係についての経験則で,1971年にK. Wadeが提案した.PSEPT(polyhedral skeletal electron pair theory)という骨格電子数Fはホウ素原子数b,炭素原子数c,水素原子数h,イオンである場合そのイオンの負電荷数x,頂点の数
n=b+c
により
F = 3b + 4c + h + x - 2n
で表される.いくつかの例外はあるが,多くのボラン骨格のほかに,カルバボラン,メタラボランなどのボラン誘導体や,さらに金属クラスターについても多くの場合に応用できる.
(1)n個の頂点からなる閉じた三角形多面体ボラン(closo-ボラン)では,n + 1対,F = 2(n + 1)個の電子が骨格の結合に用いられる.
(2)このcloso-型構造から,頂点のBが1個除かれた形の骨格のボランをnido-型,2個除かれた骨格をarachno-型,3個ではhypho-型という.Bが除かれる前の閉じた三角形多面体と同数の電子が骨格の結合をつくるので,骨格の現存B数をnとすれば,nido-型ではF = 2(n + 2),arachno-型では2(n + 3)対の電子数が結合に用いられる.
(3)正四面体型骨格では,6対(稜の数と同じ,つまり普通の化合物と同じ)を用いる.また,closo-型の三角形面の上にキャップが加わっても骨格結合電子数対数には影響しない(たとえば,正八面体の1面にBが1個余分に結合しても,6 + 1対のまま).
(4)頂点のB-Hは,電子3 + 1 = 4個中,B-H結合に2個用いられるので,骨格の結合には2個利用される.B…H…BのHは,1個の電子を寄与する.また,メタラボランなどで,たとえば-Fe(CO)3や-FeCpでは-BHと同じく2個,-NiCpでは-CHと同じく3個の電子が寄与する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報