骨格(読み)コッカク

デジタル大辞泉 「骨格」の意味・読み・例文・類語

こっ‐かく【骨格/骨×骼】

動物の体をささえ、内臓を保護している固い構造物。甲殻類などの外骨格脊椎動物内骨格とがある。ヒトは、200個余りの骨から成り立ち、関節結合縫合軟骨結合などによって構成される。「たくましい―」
物事をかたちづくる中心のところ。骨組み。「建物の―」「都市計画の―ができあがる」
[類語](1骨組み骨柄筋骨きんこつ筋骨すじぼね形骸/(2骨組み骨子大枠あらまし大筋大要枠組みアウトラインフレーム大局大綱目安

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「骨格」の意味・わかりやすい解説

骨格
こっかく

体を支え、体形をつくっている器官。ヒトの体内には200余個の骨がいろいろの形式で結合して、体の堅固な基本形となる骨格系をつくっている。骨格系は骨が主体となってこれに軟骨組織が加わり、組み立てられている。本来、骨格はこれに付着した筋(骨格筋)によって動かされる運動作用が主体となるが、そのほか、体の支持、保護、造血作用などがある。すなわち、骨格の動きに伴ってつくられる体の姿勢を維持し支える働きとともに、頭蓋(とうがい)にあっては脳髄胸郭では肺臓、心臓、骨盤では骨盤内臓というように、それぞれを保護している。造血作用とは、新生児、小児では全身の骨格、成人では胸骨、肋骨(ろっこつ)、大腿骨(だいたいこつ)、腸骨などの骨髄で血液細胞産生が行われていることをいう。

 骨格を構成する骨の連結は、その働きのうえからみて可動結合不動結合とに分かれる。骨の連結一般を広義の関節という場合には、可動結合は狭義の関節、不動結合は縫合と線維性軟骨結合とを含むことになる。可動結合(狭義の関節)では関節をつくる二つの骨面の間に関節腔(くう)という小腔をもっている。縫合は頭蓋骨にみられる鋸歯(きょし)状の骨結合であり、線維性軟骨結合は骨盤の恥骨結合、脊椎(せきつい)骨間の結合にみられ、線維性軟骨が骨間に介在する。

 全身の骨格は体幹骨(体軸骨格)と体肢骨(上肢骨と下肢骨)に大別される。体幹骨には体の垂直軸を形成する頭蓋骨、脊柱、胸郭に参加する胸骨、肋骨が含まれる。頭蓋骨は23個の骨からなり、下顎(かがく)骨だけは側頭骨と可動関節をつくり、他はすべて縫合により強固に結合している。舌骨のみは下顎骨の下方で遊離して存在する。頭蓋骨は脳を収容する脳頭蓋(前頭骨1、頭頂骨2、側頭骨2、後頭骨1、蝶形骨(ちょうけいこつ)1、篩骨(しこつ)1)および顔面頭蓋(鼻骨2、上顎骨2、頬骨(きょうこつ)2、下顎骨1、涙骨2、口蓋骨2、下鼻甲介2、鋤骨(じょこつ)1)、ほかに舌骨(1)からなる。脳頭蓋は脳を固定、保護し、顔面頭蓋は顔面形成の基盤となっている。脊柱は躯幹(くかん)の中心軸となるもので、頭蓋を支え、胸腔内臓を保護する肋骨の支点となっている。脊柱は脊椎骨(頸椎(けいつい)7、胸椎12、腰椎5、仙椎5、尾椎3~5)が上下に連結し、正中前額面(一般でいう正面)では垂直、正中矢状(しじょう)面(一般でいう側面)では緩いS状の彎曲(わんきょく)を示す。仙椎と尾椎とはそれぞれ融合して1個の仙骨、尾骨となっている。躯幹の運動は脊柱の屈伸(前後左右)運動と回旋運動によって行われる。胸郭は胸椎、肋骨、肋軟骨、胸骨が連結して籠状(ろうじょう)構造をつくり、肺臓、心臓を中心とする胸腔臓器を収容して、それらの支持、保護の働きをしている。この部位の内・外肋間筋の収縮運動によって胸椎を支点とする肋骨の上下運動がおこり、胸郭の容積が増減して肺の呼吸運動となっていく。肋骨と胸骨とを結合する肋軟骨は硝子(ガラス)軟骨で、上位7対は胸骨と肋骨とを連結するが、これに続く下位3対は上位の肋軟骨と結合することによって胸骨と結合している。第11、12肋骨は胸骨まで届かず、先端は遊離していて、いわゆる浮肋となっている。

 上肢骨は上肢帯骨(肩甲骨と鎖骨)と自由上肢骨(上腕骨、前腕骨、手根骨(しゅこんこつ)、中手骨、指骨)からなり、下肢骨は下肢帯骨(寛骨(かんこつ))と自由下肢骨(大腿骨、下腿骨、足根骨(そっこんこつ)、中足骨、指骨)からなる。骨盤は寛骨、仙骨、尾骨で構成され、脊柱を支え、骨盤内臓を収容し、保護、安定させている。

 骨格の性差を全体的にみると、男性骨格は女性のそれよりも大きくて重い。男女差のもっとも著明な点は骨盤形成の骨と骨盤全体の形である。年齢的な変化から骨格をみると、新生児の頭は身長の約4分の1であるが、成人では身長の8分の1程度となる。また、新生児の脊柱は全体にわたって後方に弓状となる凸彎であるが、生後3か月ころには頸部前彎、生後1年ころには腰部前彎も生じ、緩やかなS状彎曲となる。胸郭は幼児、小児では丸い樽(たる)状で左右径、前後径がほぼ等しいが、成人ではやや圧平された形状となる。

[嶋井和世]

動物の骨格

動物の体の大きさと形の枠組みを決め、筋肉の付着点となる構造体をいう。表皮や真皮からでき、体の外側を覆うものを外骨格といい、無脊椎動物では、節足動物のキチン質の外層、甲殻類や棘皮(きょくひ)動物のカルシウムに富んだ外層、軟体動物二枚貝類の貝殻などであり、脊椎動物の体表の鱗(うろこ)(ヘビ、トカゲ)や甲(カメ、ワニ、センザンコウ)も一種の外骨格である。これに対し、脊椎動物がもつような、体内にある骨や軟骨でできた骨格を内骨格という。脊椎動物の内骨格は、頭骨‐脊椎骨からなる中軸骨格に四肢の骨が付随したものであるが、その形態は、生活環境との適応を示す変異に富んでいる。一般に内骨格は運動性や成長の面で外骨格よりもはるかに有利である。

 無脊椎動物に含まれる有孔虫の殻や海綿の骨片も、体を支持する構造であるから内骨格とよばれることがあるが、筋肉が付着するのではないから定義にはあわない。

[川島誠一郎]


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普及版 字通 「骨格」の読み・字形・画数・意味

【骨格】こつかく

風格。また、文の気格。唐・元〔唐の故工部員外郎杜君(甫)墓係銘の序〕齊・梁に效(なら)ひては則ち魏・晉に(およ)ばず、樂府(がふ)に工(たく)みなれば則ち力五言に屈す。律、切なれば則ち骨格存せず、閑暇なれば則ち纖(せんぢよう)備ふる(な)し。

字通「骨」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「骨格」の意味・わかりやすい解説

骨格【こっかく】

動物体の支柱となり,あるいはこれを保護し,また筋肉の付着点となる堅固な構造。軟体動物の貝殻,節足動物の甲殻のように,体の外側をおおうものを外骨格,脊椎動物のように体内にあるものを内骨格と呼ぶ。ヒトでは全身に約200のがあり,互いに連結して骨格を構成する。頭蓋を含む体幹骨と四肢骨に大別される。他の動物に比べヒトの骨格は頭蓋の発達,上肢骨と下肢骨の相違,骨盤の強大などが特徴である。
→関連項目脛骨

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「骨格」の意味・わかりやすい解説

骨格
こっかく
skeleton

動物の体を支持し,保護し,あるいは筋肉の付着点として運動の支柱となる堅固な構造。主として外骨格に頼る生物と,内骨格をもつものとに分れる。外骨格は皮膚の付属物として体の外側をおおうもので,軟体動物の貝殻,節足動物のキチン質外被,棘皮動物の甲板などがその例である。これに対して内骨格は脊椎動物にみられる。脊椎動物の全身の骨格は,大別して,躯幹骨──胴骨と頭骨,四肢骨──前肢骨と後肢骨になる。骨組織の支持組織は,結合組織,軟骨組織,骨組織に分けられ,いずれも細胞自身よりもその分泌物がたくわえられて力学的な強さを与え,組織の主要部分となる。

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知恵蔵 「骨格」の解説

骨格

動物体を支持または保護し、付着する筋肉によって運動を生じる硬い構造。昆虫、甲殻類、貝類などの殻、あるいは脊椎動物の鱗や甲羅のように体の外側にあるものを外骨格、脊椎動物のように体内にあるものを内骨格と呼ぶ。内骨格を構成するのは軟骨組織と骨組織で、軟骨組織は結合組織の1つで、軟骨魚類の骨格はこれでできている。他の脊椎動物でも胚の時期の骨格は軟骨であるが、成長に伴い、大部分が骨組織に置き換わる。骨組織には、骨を形成する骨芽細胞、いわゆる骨となった骨細胞、骨を吸収する破骨細胞の3種の細胞がある。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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世界大百科事典 第2版 「骨格」の意味・わかりやすい解説

こっかく【骨格 skeleton】

単細胞動物はいうにおよばず,多細胞の動物でも体の構造が簡単なものは,全身が軟組織のみからできているが,体制の複雑な高等動物ではなんらかのしっかりした支柱または枠組みが発達して体を支えるようになる。このような構造を一般に骨格という。骨格ができると多くの場合筋肉がこれに付着するから,骨格は運動のための支点を与えたり,てこの腕として働いたりする。すなわち骨格は動物体の支柱をなすとともに,受動的な運動器官でもある。

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世界大百科事典内の骨格の言及

【体】より

…胸部には1対の乳があり,腹の正中線上には,胎生期の母体との交通路が遺存したへそがある。
[骨格と内臓]
 四肢は芯に骨格をもっているが,頭と胴では,骨格はむしろ体壁の一部をなしており,内部の内臓諸器官を保護している。体を支える軸となる骨格は脊柱で,胴の正中背側部を頸の上端から骨盤まで縦走している。…

※「骨格」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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