化学辞典 第2版 「メタラボラン」の解説
メタラボラン
メタラボラン
metallaborane
【Ⅰ】かご形ボランのB原子の1個または複数個を，金属原子で置き換えた骨格をもつ化合物．普通，この金属原子には-CO，-Cpなどが骨格外に結合している．【Ⅱ】ボランの骨格外に金属原子が結合しているもの．つまり，ボランを配位した金属錯体や，ボラン骨格間が金属原子で橋かけしているものなども含めることもある．また，BH4－が配位したテトラヒドロボラト錯体や，そのポリマーを含めることもある．【Ⅲ】ボランのかわりにカルバボランのBを金属で置換したメタラカルバボランなど，各種ヘテロボランの置換体，メタラヘテロボランも知られている．
ホウ素の水素化物(ボラン，陰イオンボランやその塩など)と，金属の化合物や錯体とを加熱反応させると得られる．ただし，メタラカルバボランに比べて反応は困難で，かつ同一条件で反応させても製品の種類，収量が異なることがある．母体のボランは，closo-型，nido-型，arachno-型などのものが知られ，金属原子数も1個または2個のものが多いが，より多く入ったものや，複数種の金属原子を含むものもあり多様である．図(a)～(d)に例を示す．これらの形と骨格結合電子数の関係は，例外はあるが，ウェイド則で説明されることが多い．図(e)，(f)は，それぞれ金属原子がボラン骨格外配置したもの，橋かけしたものの例である．一般に，対応するボランより安定で，金属Cp-錯体との共通性もある．ただし，実用的な用途には，一般に純品の合成がより容易で，かつより安定なメタラカルバボランのほうが利用される．
出典 森北出版「化学辞典（第2版）」化学辞典 第2版について 情報