ウェルンヘルデルガルテネーレ(英語表記)Wernher der Gartenaere

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ウェルンヘル・デル・ガルテネーレ
Wernher der Gartenaere

13世紀のオーストリア(あるいは南ドイツ,バイエルン)の詩人伝記不詳。代表作である短編の韻文物語《ヘルムブレヒトHelmbrecht》(1250-80)は,農民の身分にあきたりない農家の若者が盗賊騎士の手下になって農民を苦しめ,あげくの果ては農民に復讐されて悲惨な最期を遂げるという話で,中世的身分秩序を乱した成上り者のたどる破滅の運命が風刺的に語られている。しかしこれは単なる教訓詩ではなく,騎士階級が没落し,農民・市民階級が台頭しつつあった過渡期の社会的・文化的動揺リアリスティックに描いた時局物語である。表現形式は古典的伝統にならっているが,内容は斬新で,ドイツ文学最初の農民叙事詩として注目される。また13世紀後半の庶民の日常生活がきわめてリアルに描写されているので,史料的価値も高い。とりわけヘルムブレヒト父子の対立は,新旧世代の時代を超えた葛藤のドラマとして,現代の読者にも興味深いものがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウェルンヘルデルガルテネーレの言及

【ドイツ文学】より

…これらの叙事詩の基礎にある倫理は,行動に節度を保ち,調和のある生き方をすすめるものであったが,宮廷社会が混乱し,その倫理が空洞化するにつれて,長編の叙事詩形式は維持されなくなっていく。ウェルンヘル・デル・ガルテネーレの《ヘルムブレヒト》のように,身分社会の混乱をそのまま映し出す短い形式への移行が生じたし,またそこに滑稽譚という領域を開拓して風刺文学の草分けとなったのが,シュトリッカーである。
[抒情詩のモティーフ]
 抒情詩ではトルバドゥールの様式を受け継いだミンネザングが成立し,貴婦人への愛の奉仕を最高の理念とする歌が多く作られた。…

※「ウェルンヘルデルガルテネーレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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