改訂新版 世界大百科事典 「エキミス」の意味・わかりやすい解説
エキミス
arboreal spiny rat
アメリカトゲネズミともいう。外形がネズミに似た齧歯(げつし)目エキミス科キノボリトゲネズミ属Echimysに属する哺乳類の総称。南アメリカの北部と中部に分布し,ギアナトゲネズミ(ヨロイキノボリトゲネズミ)Echimys armatusほか約10種がある。体長17~35cm,尾長15~30cm。外形はアカネズミ類によく似るが,全身に短い針状の剛毛を密生する。尾はふつう裸出し,毛の房を欠く。体の背面は黄褐色ないし赤褐色,腹面は淡褐色または白色。川岸の林などの樹上にすみ,昼は樹洞の枯葉でつくった巣で眠り,夜活動する。クロー,クロー,またはトロー,トローとよく鳴き,corós,torósなどの現地名はこれに由来する。主食はバナナなどの果実。1腹1~2子。敵に襲われると尾を自切して身を守る。切れる部位は第5尾椎(びつい)の中央である。エキミス科はテンジクネズミ同様下眼窩孔(かがんかこう)が巨大で,臼歯(きゆうし)は上から見るとエナメル質の層が8の字形などの点がネズミ科のものとまったく異なる。原始的な科で,化石は漸新世前期に現れている。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報