日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンジクネズミ」の意味・わかりやすい解説
テンジクネズミ
てんじくねずみ / 天竺鼠
domestic Guinea pig
[学] Cavia porcellus
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目テンジクネズミ科の動物。南アメリカのコロンビアからガイアナにかけて肉用家畜として飼育されていたものが、16世紀中ごろにオランダ人によりヨーロッパに輸入され、日本には19世紀中ごろに輸入された。原種は不明。別名をモルモットともいい、現在では、この名で実験動物として医学・生物学領域で広く使われている。英名は、体形と鳴き声がブタを連想させることに由来し、「ギニアのブタ」という意味であるが、ギニアはガイアナの誤りと思われる。一方、「モルモット」の語はオランダ語のmarmotjeの転化といわれるが、これはオランダ人が、本種をユーラシア北部山地に広く分布するリス科のマーモットmarmotと誤ったためと思われる。
頭胴長25~35センチメートル、体重300~700グラム。無尾で四肢は短く、前足に4指、後足に3指がある。耳は小さくて丸く、鼻吻(びふん)は有毛。被毛から、光沢のある短毛のイングリッシュ、毛質粗剛で短毛のアビシニアン、粗剛長毛のペルビアンの3品種に分けられる。毛色は、白色、茶色、黒色、三毛色などさまざまで変化に富む。門歯(切歯)は白色、臼歯(きゅうし)は無根で一生伸び続ける。昼行性で、性質は温和。植物質のものを主食にし、飼育下では野菜、リンゴ、パンなどを食べる。固形飼料で飼育するときは、水を十分に与え、ビタミンCを添加する必要がある。妊娠期間は平均67日、普通1産3~4子を年数回出産する。新生子は開眼で、体重70~120グラムもあって、生後1~2時間で歩き始め、食事をとることができ、2か月で成熟する。寿命は4~5年であるが、8年の記録がある。
[土屋公幸]