改訂新版 世界大百科事典 「エゾアカヤマアリ」の意味・わかりやすい解説
エゾアカヤマアリ
Formica yessensis
膜翅目アリ科の昆虫。働きアリの体長は5~8mm,黒褐色の腹部を除きほぼ黄赤色。北海道から本州中部の山地にまで生息し,シベリア東部,中国東北部,朝鮮半島などにも分布する。本州の中部では標高1400~1800mくらいのカラマツ林にすみ,巣は地中につくられるが,その上に枯れた植物の小片を積み上げて高さ50cmほどの円錐形の塚をつくり,夏にその中で幼虫を育てる。ふつうは1家族で一つの塚にすむが,いくつかの塚の間を自由に往来して全体が一つの家族のように見える場合があり,これをスーパーコロニーsuper colonyという。北海道石狩湾岸には約20kmに広がる世界最大のスーパーコロニーが知られている。働きアリには腹部を前下方に曲げ,尾端から霧状のギ(蟻)酸を10cmほど放出して巣を防御する習性がある。婚姻飛行は8月上旬の日中に行われる。長野など一部の地方では本種を多量に採取し,食用に加工して缶詰としている。
近縁種のアカヤマアリF.sanguineaはユーラシア大陸北部に広く分布し,日本では北海道,本州の中部地方に分布する。働きアリの体長は6~9mm。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報