改訂新版 世界大百科事典 「オドーエフスキー」の意味・わかりやすい解説
オドーエフスキー
Vladimir Fyodorovich Odoevskii
生没年:1803-69
ロシアの小説家,哲学者,音楽評論家。デカブリストの詩人のオドーエフスキーAleksandr Ivanovich Odoevskii(1802-39)の従弟。早くからドイツ哲学,とくにシェリングの影響を受け,ロマン主義的な哲学サークル〈愛智会〉の会長をつとめた。風刺小説《公爵令嬢ミミ》(1834),ユートピア小説《4338年》(未完)など多くの作品を残したが,代表作《ロシアの夜》(1844)は《セバスティアン・バッハ》《ベートーベンの最後の四重奏曲》などの短編小説と哲学的会話からなり,ロシア最初の哲学小説と称される。この作品の性格は複雑で,ロマン主義的色彩や音楽論のほかに,西欧の功利主義にたいする批判が見られ,救済者としてのロシアの役割が強調されている。音楽史上でも重要な人物で,音楽評論活動の創始者の一人とされ,グリンカなどロシア国民楽派を育てた。
執筆者:鈴木 晶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報