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功利主義 こうりしゅぎutilitarianism

翻訳|utilitarianism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

功利主義
こうりしゅぎ
utilitarianism

19世紀,イギリスで盛んになった倫理,政治,社会思想。広義には幸福主義快楽主義と共通する点をもち,R.カンバーランド,F.ハチソン,T.ホッブズ,J.ロック,D.ヒュームなどにもその傾向がみられるが,狭義には J.ベンサムミル父子などに代表される経験論的功利主義をさし,最大多数の最大幸福をスローガンとする。彼らは幸福と快楽とを同一視し,苦を悪としたが,ベンサムでは快楽は量的にとらえられ,快楽の計量可能性が主張され,J.ミルでは快楽に質的差異が認められ,精神的,倫理的快楽が注目された。この思想は,イギリスでは H.シジウィックの合理主義的功利主義,H.スペンサーの進化論的功利主義に引継がれ,ドイツではイェーリングらに影響を与えた。特にイギリス政治史上に果した役割は絶大で,根強い保守的風潮を破って改革の機運をつくり出すことに成功した。いうならば功利主義は産業革命の哲学であった。そしてこの旗のもとに多くの知識人や新興中産階級が結集し,古い秩序に対して一大改革運動を推し進めていった。 1822年から 29年にかけての法典整備や刑罰規定の改正,34年の救貧法改正,35年の地方自治法制定や教育制度改正などはその成果である。なかでも「1832年革命」といわれるリフォーム=アクトの成立こそは功利主義の最大の勝利であった。

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デジタル大辞泉の解説

こうり‐しゅぎ【功利主義】

功利を第一とする考え方。
幸福を人生や社会の最大目的とする倫理・政治学説。「最大多数の最大幸福」を原理とする。英国のベンサムミルによって唱えられた。功利説。

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百科事典マイペディアの解説

功利主義【こうりしゅぎ】

utilitarianismの訳。19世紀の英国で有力となった倫理学説,政治・社会思想。功利(快を求め苦を避ける人間の傾向)を価値の原理とみなす。ベンサムは量的な快楽計算を考え,〈最大多数の最大幸福〉の原理によって個人の幸福と社会の幸福を調和させようとした。
→関連項目快楽主義個人主義ジェボンズマンデビル

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世界大百科事典 第2版の解説

こうりしゅぎ【功利主義 utilitarianism】

主として19世紀のイギリスで有力となった倫理学説,政治論であり,狭義にはJ.ベンサムの影響下にある一派の思想をさす。ベンサムは《政府論断片》(1776)のなかで,〈正邪の判断の基準は最大多数の最大幸福である〉という考えを示した。彼はこれを立法の原理とすることによって,従来の政治が曖昧な基礎にもとづく立法に依拠していたのをただそうとしたのである。〈功利utility〉という語はすでにヒュームの《人間本性論》(1739‐40)で用いられており,幸福(快楽)をもたらす行為が善で不幸(苦痛)をもたらす行為が悪だとする考えは,常識のなかには存在していたといえるが,ベンサムはそれを学問的な原理に高めようとしたのである。

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大辞林 第三版の解説

こうりしゅぎ【功利主義】

一般に、功利・効用を生活の究極基準とする考え。
〘倫〙 〔utilitarianism〕 快楽と苦痛が人間の行為の原因であるばかりか、行為の正・不正の基準をも提供するという倫理説。利己的快楽と公衆の福祉とを一致させるため、ベンサムは快苦を量的に捉える快楽計算を導入。ミルはこれを修正して、快楽に質的区別を認めた。 → 快楽計算

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

功利主義
こうりしゅぎ
utilitarianism

行為の目的、行為の義務、正邪の基準を、社会の成員の「最大多数の最大幸福」に求める倫理、法、政治上の立場。イギリス思想に著しい考えで、古典経験論の創始者F・ベーコンにもすでにその傾向はみられる。また、ロック、ヒューム、古典経済学派、神学者たち、R・カンバーランドやF・ハチソンらのような17、18世紀の一群の道徳思想家などについても同様の傾向がみられる。とくにハチソンには「最大多数の最大幸福」とほぼ同じ句がみられる。
 しかし、この立場を単純明快に定式化、組織化したのはJ・ベンサムで、それはミル父子により継承、発展させられた。彼らは幸福と快楽を同一視したが、ベンサムが七つの基準による快楽の計量可能性と快楽計算の構想を唱える「量的快楽主義」を主張したのに対し、J・S・ミルは快楽に質的な差を認めて「質的快楽主義」へと変わる。さらに、ベンサムは外的制裁を重んじたが、ミルは内面的な動機、良心、自己陶冶(とうや)の重要性も認めて、心情道徳、完成説への傾斜を示した。彼らと同時代の急進主義者たちにも功利主義の傾向がみられるが、以後もスペンサーやスティーブンらの進化論的功利主義、シジウィックの倫理、G・E・ムーアの特異な耽美(たんび)的功利主義などがある。さらに、現代イギリス日常言語学派の、メタ倫理学の暗黙の規範意識や、広くアングロ・アメリカンの道徳思想には、その多様な変形がうかがわれる。
 功利主義に内在する問題として、たとえば次の点を指摘できよう。
(1)最大多数の至福が目的である以上、功利主義は目的論の一形態として目的論一般のもつ問題に直面する。義務論のような反目的論の立場は、たとえば約束の履行などの根拠が、単に社会全体の至福に及ぼす結果だけでなく、正義、社会的公正などの、各成員に対する平等の配慮のような別の原理に基づくと主張する。
(2)かりに功利的目的の達成が義務の一つだとしても、倫理的に目的は善であるべきだから、功利の原則の根底には善行の義務の原則が予想されよう。しかも、ベンサム、ミル父子は、善を幸福と、幸福を快楽と同一視したが、その必然性はなく、理論、現実の両面で多様な善の内容が考えられる。
(3)量的、質的快楽主義の対照から明らかなように、目的評価の基準の不明確さは、快楽主義的功利主義の基礎を不安定にし、また量的測定の基準だけでは、功利主義を経済的価値のような道徳外の価値に従属させるおそれがある。[杖下隆英]

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世界大百科事典内の功利主義の言及

【快楽主義】より

…ここには浅薄ではあるが,大多数の人間を支配している快楽原則を見抜いた冷徹な世知がある。功利主義の提唱者ベンサムやJ.S.ミルは〈最大多数の最大幸福the greatest happiness of the greatest number〉を標語として掲げ,幸福とは人間の求める善であり,それは快楽を求め,苦痛を避ける合理的行動によって達成しうると考える。個人の合理的利己的行動こそ政治の干渉さえ受けなければ,かえって社会の自然の調和を生み,最大善・最大幸福に寄与しうるという。…

【社会科学】より

…両者はそれぞれ,近代における政治学と法律学を基礎づけるものとなった。 経験主義哲学が倫理学説になったものが,人間行為の善悪の判断基準を幸福の実現に求める功利主義である。功利主義の倫理学説は,イギリスにおいてハチソン,スミス,ベンサム,ミル父子の流れによって担われた道徳哲学moral philosophyをつくり出し,これを母体としてスミスからJ.S.ミルにいたる古典派経済学が生み出された。…

【社会心理学】より

…しかし社会心理学の成立に直接にかかわりをもつのは,近代以降の諸思想である。イギリスではJ.ベンサムやH.スペンサーらの功利主義説が,快楽の追求と苦痛の回避をもって人間のいっさいの動機の源とする見方を打ち出し,フランスでは19世紀末G.ル・ボンやJ.G.タルドが暗示や模倣をもって社会現象を説明する見地を展開する。他方E.デュルケームは,社会学的立場から,個人意識とは区別された平面で集合表象を重視し,それをもって宗教,道徳などの研究に進んでいる。…

※「功利主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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