改訂新版 世界大百科事典 「オハグロノキ」の意味・わかりやすい解説
オハグロノキ
Cratoxylon ligustrinum (Spach.) Bl.
オトギリソウ科の常緑で低木あるいは小高木,高さは2~10m。対生する葉は薄い皮質で楕円形,長さ5~10cm,全縁で無毛。花は腋生(えきせい)する短い集散花序につき,直径は約1cmほど。蒴果(さくか)は楕円形で長さ約1cm,萼片が宿存している。中国大陸南部から東南アジア,マレーシア地域に分布し,マレーでは材からとれるタールで歯を黒く染めたといわれる。中国では風邪や下痢の薬とされ,また葉は茶として利用される。オハグロノキの所属するクラトザイロン属Cratoxylonはアジア熱帯に10種あまりが分化し,そのなかにはゲロンガンC.arborescens(Vahl.)Bl.のように樹高50mに達するものがある。この種の心材は暗桃色から煉瓦色で材質も良いので,建築材,合板材料や細工物に利用される。他の種も材質は良いが,ゲロンガンほどの大径木にはならない。ゲロンガンは分布するマレーシア,インドネシアなどにおける現地名。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報