改訂新版 世界大百科事典 「オリバ」の意味・わかりやすい解説
オリバ
Oliba
生没年:971?-1046
スペイン北東部カタルニャの貴族で,同地方のビック市の司教。カタルニャの一部であるセルダニャの伯爵の子として生まれ,カタルニャ統一の祖ビフレド1世の曾孫にあたる。リポールのベネディクト会修道院(6世紀創建,880年再建)で教育を受けたと考えられ,父親の死後家督を継いだが,やがて同修道院で修道生活に入った(1002)。6年後には修道院長に選ばれ,1017年にビック市の司教に任命された。当時のカタルニャはフランク王権から独立(988)して日も浅く,イスラム教徒の軍事攻勢で首都バルセロナが破壊(985)されるなど,文字どおり存亡の危機に立たされていた。こうした中でオリバは国内諸侯の内紛を収拾したり,教会に対する世俗権力の不当な介入を排しつつその内部規律を引き締めるとともに,ローマとの関係強化に尽力して聖俗両界の深い信望を得た。当時リポールの修道院はイスラム世界の学術書の所蔵で知られていたが,オリバはさらに書籍の収集に努め,修道士たちの写本作業を奨励した。またバルセロナ近郊のモンセラート修道院(1023)をはじめ,カタルニャ各地で修道院の新設を進め,カタルニャ教会の新しい発展の基礎を築いた。
執筆者:小林 一宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報