改訂新版 世界大百科事典 「カエキリア」の意味・わかりやすい解説
カエキリア
Caecilia
伝説的な色彩の濃い,3世紀ローマの殉教聖女。イタリア語でチェチーリアCecilia,英語でセシリアCecilia。貴族の娘で,若くしてキリスト教に帰依し,異教徒の婚約者ウァレリアヌスとその弟ティブルティウスを説いて受洗させ,自らはその純潔をキリストに捧げた。異教の偶像礼拝を拒み,風呂場で窒息させられるが生き永らえ,さらに3回首を剣で切りつけられ,3日後にようやく殉教。遺骸はカリストゥスの地下墓所に葬られた。トラステベレTrastevereの自宅は後にサンタ・チェチーリア・イン・トラステベレ教会となる。15世紀以降,音楽と音楽家の守護聖女とみなされるようになり,オルガンなどさまざまな楽器をもつか,楽を奏する天使たちを伴って表現される。これは,彼女の結婚式のための音楽に合わせて,魂と肉体の純潔を守りたまえと心の中で神に歌い祈りつづけたという伝説に由来する(1584年ローマに,その名を冠した〈サンタ・チェチーリア音楽アカデミー〉が創立された)。
また,1599年に聖女の柩(ひつぎ)を開いたところ,横臥する遺骸がまったく損なわれることなく発見され,聖女への崇敬を高めたといわれる。祝日は11月22日。
執筆者:荒木 成子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報