改訂新版 世界大百科事典 「カキバチシャノキ」の意味・わかりやすい解説
カキバチシャノキ
Cordia dichotoma Forst.f.
アジアの熱帯に広く分布するムラサキ科の中高木。日本では奄美諸島以南に自生地がある。樹皮は繊維質で,若い枝は脱落性の毛におおわれる。葉は互生し,卵形ないし楕円形。長さ7~12cm,幅4~7cm。縁は全縁でやや波打つ。花序は腋生(えきせい),新葉とともに展開し,二叉(にさ)に分岐した集散花序で,学名のdichotoma(二叉分岐の意)はこの特徴に由来する。花冠は直径約7mmで淡黄色,5裂し平開する。果実は漿果(しようか)で球形,直径約1cm,熟すと赤くなり,後に黒変する。下半分は椀状に合着した宿存性の萼につつまれる。果実は甘く,食用となる。また各部分が民間薬として中国やインドで使用される。
カキバチシャノキ属Cordiaは世界の熱帯・亜熱帯域に広く分布し約230種を含む大きなグループである。花が大輪で美しい種が多く,観賞用に栽培される。材には美しい条紋があり,工芸用,器具用に用いられる。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報