果実(読み)かじつ

精選版 日本国語大辞典 「果実」の意味・読み・例文・類語

か‐じつ クヮ‥【果実】

〘名〙
① 植物の成熟した果皮およびその付属物すべてをいう。狭義には種子と果皮をさすか、または、卵子が受精した結果、発達した子房をいう。果実の形式は多様で、堅果(けんか)(=クリなど)、穎果(えいか)(=イネなど)、痩果(そうか)(=スミレなど)、豆果(とうか)(=エンドウなど)、液果(えきか)(=ミカンなど)、石果(せきか)(=ウメなど)等があり、子房以外のものが伴って果実の主体をなすものに偽果(ぎか)(=リンゴナシなど)がある。実。果物。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※日本開化小史(1877‐82)〈田口卯吉〉一「所謂天造の果実葉根を集めて其食物と為し」 〔礼記‐王制
② 努力などの結果。
※正法眼蔵(1231‐53)伝衣「本祖あらず、いかでか善根の種子をきざさん、いはんや果実あらんや」
③ 元物から生ずる経済的収益物。果樹の実、羊毛、牛乳などのように元物から自然に産出される天然果実と、家賃、地代、利息などのように元物を使用する対価として受ける金銭などの法定果実とがある。
民法(明治二九年)(1896)一八九条「善意占有者占有物より生する果実を取得す」

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デジタル大辞泉 「果実」の意味・読み・例文・類語

か‐じつ〔クワ‐〕【果実】

種子植物の花の子房が発達・変化したもの。中に種子を含む。狭義には、成熟した子房が主部になる真果しんかをさし、花托など子房以外の部分が主部になるものを仮果として区別することもある。果皮の性状から乾果液果に分け、由来する子房が一つかそれ以上かによって単果複果とに分けられる。
液果のうち、食用となるもの。くだもの。水菓子
精神的・肉体的な働きの成果。みのり。
「日本で結んだ学術の―を」〈鴎外・妄想〉
法律用語。ある物(元物げんぶつ)から産出される収益物。穀物・羊毛・牛乳などの天然果実と、利息・地代・家賃などの法定果実とがある。
[類語]木の実草の実青果

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改訂新版 世界大百科事典 「果実」の意味・わかりやすい解説

果実 (かじつ)

法律用語。日常用語よりはるかに広く,およそ〈物から生ずる経済的収益〉という意味で使用される(なお,果実を生ずる物を元物(がんぶつ)と呼ぶ)。したがって単に木になる果物に限らず,野菜,牛乳,家畜の子,羊毛,鉱石などの自然の有機的・無機的産出物,さらには,地代,家賃,小作料,利息等の,物の使用の対価も果実と呼ぶ。法律上,前者を〈天然果実〉,後者を〈法定果実〉という(民法88条)。果実をめぐり社会生活上最も問題となるルールとしては,誰に果実が帰属すべきかということである。法は次のような基準を定めている。(1)天然果実の場合 元物から分離し独立のもの(動産)となった果実の所有権は,分離する時にこれを収取する権利を有する者に帰属する(89条1項)。したがって,種をまき作物を育てても,収穫前に田畑を手放してしまえば,収穫時の所有者(=買主)が果実を収穫しうるわけである。もっとも,売買の際に,売主が当該果実の収取権を留保する旨の特約がなされていれば,それに従うべきことはいうまでもない。なお,果実収取権者は,元物の所有者か,またはこの所有者から収取権を得た者(地上権者(265条),永小作権者(270条),留置権者(297条),賃借権者(601条),特殊なものとして,善意占有者(189条)など)である。(2)法定果実の場合 家賃等の使用の対価は,天然果実と異なり元物からの〈分離〉ということが考えられないから,時々刻々の収取権者にそれが帰属することとなる。そこで,たとえば,月半ばで家主が交替すれば,月払い家賃は最終的には新旧両家主がその存続期間に応じ日割計算でそれを分配することになる(89条2項)。(3)例外 上記のとおり,果実の帰属に関するルールに対し利害関係人の特約があれば,それに従う。また,売買に際し,その目的物が買主に引き渡されない間にその物から果実が生じた場合,売買代金が支払われるまでは,売主はそれを収取しうる(575条1項)。
執筆者:

果実 (かじつ)

(み)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「果実」の意味・わかりやすい解説

果実
かじつ
fruit

狭義には花後,子房が発達して生じた器官。しかし実際には花の他の部分が一緒になって生長する場合が多く,これを区別するために狭い意味の果実を真果といい (ウメ,サクラ,カキ,アブラナ) ,後者を偽果と呼ぶ (ナシ,リンゴ,イチゴ,イチジク,イネ,どんぐり) 。なお果実の成熟時,多肉のものを液果 (ウメ,ナシ,イチゴ) ,乾燥するものを乾果 (アブラナ,イネ) という。

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百科事典マイペディア 「果実」の意味・わかりやすい解説

果実【かじつ】

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普及版 字通 「果実」の読み・字形・画数・意味

【果実】かじつ

木の実。

字通「果」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「果実」の解説

果実

 被子植物の子房またはその周辺の器官が肥大して成熟し種子を包んだ器官.食用になるものも多い.

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