改訂新版 世界大百科事典 「カラトセマーン修道院」の意味・わかりやすい解説
カラト・セマーン修道院 (カラトセマーンしゅうどういん)
Qal`at Sem'an
シリア北部,アレッポ近郊にある5世紀末の修道院。シメオン修道院ともいう。現在は廃墟。シリアの初期キリスト教建築中最も重要な遺構で現存最大。地上約15mの柱の上で30年以上もの間苦行(柱頭行者)をし,生前すでに信仰を生んだというシメオンSymeōn(390ころ-459)を記念するため,その没後築かれた大規模な建物で,以後多くの巡礼者を集めた。教会は,苦行の柱(基部のみ現存)を囲う1辺約10mの八角堂を核として,東西南北に十字架状に三廊式バシリカを突出させたような特殊なプランをなす。いちばん大きな東の身廊(長さ約43m)は,先端に3祭室が設けられ,典礼などを行う本来の意味の教会となっており,他の三つの身廊は巡礼者を収容したものと考えられる。三つの大きなアーチをもつ南側が入口になっている。入口右手に僧房跡,前方200m,修道院入口脇に洗礼堂がある。
執筆者:長塚 安司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報