改訂新版 世界大百科事典 「カラー自由度」の意味・わかりやすい解説
カラー自由度 (カラーじゆうど)
colour degrees of freedom
クォークにはu,d,s,c,……などその種類を表すフレーバー自由度(香りの自由度)があるが,それぞれのフレーバー自由度をもったクォークはさらにu(赤),u(青),u(緑)というように3種類あると考えられている。この赤,青,緑の分類を与えるのがカラー自由度で,色の自由度とも呼ばれる。カラーとかフレーバーといっても実際の香りや色ということではなく,あくまで種類分けをするための便宜上の用語である。カラー自由度は歴史的にはクォークの統計性に関連して導入された。クォークがフェルミ粒子であるとすると,その多体の波動関数は反対称でなければならない。一方,クォークではスピン自由度とSU(3)対称性がいわば入りまじった近似的な対称性としてSU(6)対称性が考えられ,実験事実はこのSU(6)群のもとで陽子その他のフェルミ粒子中のクォークの波動関数は対称でなければならないことを示唆する。このジレンマから逃れるには新しい自由度を考え,それに対応する波動関数が反対称であるとして全体の反対称性を回復するわけである。実際にカラー自由度が必要であることは電子-陽電子反応でハドロンをつくる実験からも要請される。
執筆者:菅原 寛孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報