改訂新版 世界大百科事典 「カルバニオン」の意味・わかりやすい解説
カルバニオン
carbanion
炭素原子上に負電荷をもつ有機化合物のイオンをいう。カルボカチオンの対照語で炭素carboの陰イオンanionの意。炭素原子から陽子が脱離してできるカルバニオンの名称は,その母体化合物に接尾語-ide(イド)をつけてつくる。たとえば,ブタンのC-1からプロトンがとれてできるカルバニオンは1-ブタニドとなる。一般にカルバニオンは陽子脱離などによって生成する反応性中間体であり,求核試薬として多くの有機反応にあずかる。ある種の有機金属化合物(メチルリチウム,フェニルリチウム,グリニャール試薬など)はカルバニオンとして反応する。これらは不活性条件下(空気や水のない条件)では安定に
存在する。シクロペンタジエニド,ビシクロ[3.2.2]ノナトリエニドなどのカルバニオンは,不活性条件下で安定な結晶として単離されるが,空気中では爆発的に燃焼して分解する。
→有機化学反応
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報