改訂新版 世界大百科事典 「カンガセイロ」の意味・わかりやすい解説
カンガセイロ
cangaceiro
ブラジル北東部の乾燥地帯セルトンsertãoの盗賊。自然条件に恵まれず,10年に1度の割で干ばつに襲われるセルトンの住民は,大土地所有制のため,自分の土地をほとんど持つことができず,貧しい生活を送ってきた。そのため彼らの間から,田舎町の商店,金持,大農場,行商人を襲うカンガセイロが続出した。彼らは,単独または集団で略奪,放火,殺人などを行った。住民は,自己に加えられた不正を自分で除くことが正当であるという考えをもち,法や警察をむしろ敵視した。名誉を守る復讐のためなら,殺人を犯すことも容認された。有名なカンガセイロには,アントニオ・シルビーノAntônio Silvino(1875-1944)とビルゴリーノ・フェレイラ・ダ・シルバVirgolino Ferreira da Silva(1898-1938。別名ランピアンLampião)がいる。後者は,警察・軍隊と長年闘い,ついに討伐されたが,1000人以上を殺したことが知られており,文学,映画,歌の主題ともなった。
執筆者:山田 睦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報