化学辞典 第2版 「キレート開始剤」の解説
キレート開始剤
キレートカイシザイ
chelate initiator
ある種のアセチルアセトン金属キレート化合物は,ビニル化合物のラジカル重合を誘起する.このように,重合の開始剤となりうる金属キレート化合物をキレート開始剤という.たとえば,一連の金属キレート化合物を用いてメタクリル酸メチルの重合を行うと,中心金属の変化に伴い,
MnⅢ ≫ CoⅢ > MnⅡ > CuⅡ
の順に重合活性は減少し,ほかの金属の場合にはほとんど活性を示さない.一方,中心金属を固定して配位子を変化させると,α位の置換基の変化に伴い,
C6H5 > CH3 > H
の順に活性が減少する.すなわち,不飽和共役基をα位に導入することにより活性は増大する.しかし,α置換フェニルの場合にも,
p-OCH3 > p-CH3 > H > p-Cl
のように活性が変化することにより,極性効果も無視できない.β位置換の場合には,
OC2H5 > CH3 ≫ C6H5 ≒ 0
となり,共役基を導入すると活性がいちじるしく低下する.一般に,活性序列は単量体あるいは溶媒の種類によって変化する.たとえば,トリクロロアセトアルデヒド,アセトアルデヒド,ホルムアルデヒドなどの重合に対しては,CoⅡ,MnⅡがすぐれた活性を示す.また,これらの系では生成重合体がいずれもポリエーテル鎖よりなっていることから,これらの場合には,配位アニオン機構で重合が進行しているとする説もある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報