ラジカル重合(読み)ラジカルジュウゴウ

化学辞典 第2版 「ラジカル重合」の解説

ラジカル重合
ラジカルジュウゴウ
radical polymerization

遊離基重合ともいう.連鎖重合反応一種で,重合活性種である連鎖伝達体遊離基である.工業的に生産されているビニル重合体は,ほとんどこの重合によってつくられている.ラジカル重合反応は次の四つの反応から成り立っている.

(1) 開始反応

ここで,Iは開始剤,R・は開始剤の分解によって生じた遊離基,Mは単量体,M・はその遊離基.開始の遊離基R・は,通常,過酸化物アゾ化合物の熱分解でつくられるが,放射線を用いるときには単量体が分解して開始遊離基になるので,開始剤を必要としない.

(2) 成長反応

(3) 停止反応

2Mn・ → P

このように遊離基どうしが反応するときを二次停止という.重合反応には,重合体のなかに遊離基末端が閉じ込められたり,微量不純物と反応して停止してしまう場合もある.このときの反応は,遊離基濃度の一次に比例するので一次停止という.

(4) 連鎖移動反応

Mn・ + A → Mn + A・

遊離基末端が成長反応とは異なる反応を起こし,A・が次の開始遊離基になる.停止反応が二次のとき,次の速度式が成立する.

ここで,[M],[I]は,それぞれ単量体濃度,開始剤濃度である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラジカル重合」の意味・わかりやすい解説

ラジカル重合
らじかるじゅうごう
radical polymerization

ラジカル(遊離基)反応によって行う重合。高重合の一形式で、重合体成長末端はラジカルである。イオン重合に対する語で遊離基重合ともいう。工業的に生産されている多くのビニル重合体(ビニルポリマー)はこの重合法でつくられている。(1)開始反応、(2)成長反応、(3)停止反応の三つから成り立っている。開始反応の開始剤としては、ラジカル分解しやすい過酸化物、アゾ化合物、ハイドロパーオキシドなどが用いられる。加熱または紫外線放射線照射で単量体(モノマー)をラジカル化させて開始させることもある。次の成長反応で重合体(ポリマー)の骨格ができあがり、ついでそれが安定化する。これを停止反応という。このほかに連鎖移動反応も副生する。

垣内 弘]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラジカル重合」の意味・わかりやすい解説

ラジカル重合
ラジカルじゅうごう
radical polymerization

ビニル重合体を生成する重要な反応であって,成長鎖がラジカル (遊離基) である付加重合をいう。多くのビニル化合物およびジエン化合物がラジカル重合により重合体を生成し,ビニル重合体は工業的にはほとんどラジカル重合により生産されている。ラジカル重合は連鎖反応であって,反応を始める開始反応,成長鎖に単量体が付加して重合体を生じる成長反応,反応が止る停止反応,成長鎖のラジカルが他の分子に移る移動反応の4つの反応 (素反応) から成っている。重合はラジカルを生じる開始剤,熱,光,放射線などによって行われるが,工業的には開始剤による場合が大部分である。

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世界大百科事典(旧版)内のラジカル重合の言及

【重合】より

…すなわち,(化学式)あるいは,(化学式)となる。このような反応機構で起こる付加重合反応をラジカル重合radical polymerizationといい,反応(2),(3),(4)および(5)をそれぞれ開始反応,成長反応,停止反応という。 ラジカルは反応性が高いため,モノマーの不飽和結合以外に,反応系に存在する種々の物質と反応することもしばしば起こる。…

※「ラジカル重合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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