日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンメアブ」の意味・わかりやすい解説
キンメアブ
きんめあぶ / 金眼虻
[学] Chrysops suavis
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目アブ科に属する昆虫。旧名メクラアブ。体長10ミリメートル内外の中形種。触角は細長く、第3節の環節は4個。胸背は黒色、2本の灰色縦条があり、側縁は黄色。はねには中央を横切る黒褐色紋がある。腹部第1~第2節は黄色、第3節以下は黒色、中央部に黄色縦条をもつ。第3節側方に1対の黄色円斑(えんはん)をもつ。成虫は夏に出現し、家畜やヒトを襲う。卵は水辺の植物に産み付け、約1週間で孵化(ふか)し、近くの日当りのよい湿土中で成育し、1年後に蛹化(ようか)し羽化する。日本全土、中国、シベリア東部に分布する。吸血飛来の際、やたらに人体にまつわりつき、周りが見えていないかのごとく突進してくるようであることが、一般にメクラアブとよばれてきたゆえんである。1981年の国際障害者年の際、メクラアブは不適当な名ということから、はねに紋があるのでハネモンアブの名称を使うことが提起されたが、最終的に昆虫関連学会で認められた和名はキンメアブとなった。
[倉橋 弘]