日本大百科全書(ニッポニカ) 「クァールトン」の意味・わかりやすい解説
クァールトン
くぁーるとん
Enguerrand Quarton
(1415ころ―1466以後)
フランスの画家。北フランス出身らしいが、生没年、生涯など不明の点が多く、クァールトンのつづりもCharretonなどいくつかある。資料的には、1444年エクス(エクサン・プロバンス)、1446年アルル、1447~1466年アビニョンで制作したことが判明している。確実には『憐(あわれ)みの聖母』(シャンティイ、コンデ美術館)、『聖母の戴冠(たいかん)』(ビルヌーブ、レザビニョン施療院)の2点のほか、『二人の聖者と聖母子』(アビニョン、プチ・パレ)が彼の作品とされる。さらに『ビルヌーブ・レザビニョンのピエタ』(パリ、ルーブル美術館)の作者にも擬せられている。15世紀プロバンス画派のもっとも重要な画家の一人であり、ファン・アイクなどのフランドル派の写実性とイタリア画派の影響下に、プロバンス的な明晰(めいせき)さと明るい色調を加え、フランス・ゴシックの成熟期、さらに近代への第一歩を画している。
[中山公男]