改訂新版 世界大百科事典 「クサリゴケ」の意味・わかりやすい解説
クサリゴケ
クサリゴケ科Jubulaceae(=Lejeuneaceae)の苔類の総称。世界中に広く分布するが,とくに熱帯で多くの種属が分化している。苔類の科の中で属および種の数が最大で,世界では約80属1500種が知られ,日本では約25属100種が記録されている。一般に樹幹に着生するが,ヒメクサリゴケ属Cololejeuneaやカビゴケ属Leptolejeuneaのように,シダや常緑樹の葉上に生育する葉上苔(ようじようごけ)もある。植物体は一般にごく小さく,基物に密着してはう。葉は茎の両側面と腹面の3列に配列するが,腹面の葉は退化消失しているものも多い。クサリゴケという名は,微小な葉の規則正しい連なりを鎖に見立てたものである。茎の側面の葉は基部に小さな袋を備え,中に水を蓄える。ムシトリゴケ属Coluraのこの袋は,タヌキモの捕虫囊に似た構造で,甲殻類などの微小な動物を捕らえる。胞子による繁殖のほか,無性芽による栄養繁殖を行うものも多い。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報